南洋コーヒーを届け続けたい~1953年創業、老舗コーヒーロースター Ho Tit Coffee (前編)

こちらのコーヒー屋さんに通うようになって、おそらく3年ぐらい。

 

いちばん最初にお店に行って買ったコーヒー(パウダー)が美味しかったので、その後定期的に買いに行くようになり、何度か行ったらお店のおばちゃんに覚えてもらい、そのうち顔なじみになり、今ではお店に行く時は、潮州クエを買って持って行ったり、親しくするようになりました。

 

コーヒー屋さんと言ってもカフェではなく、コーヒー豆を焙煎するコーヒーロースターで、コーヒー豆やコーヒーパウダーを売っています。1953年と独立前の創業、現在は創業者のお父様から事業を引き継いだ息子さんご夫妻が 2代目として経営されています。

 

Ho Tit Coffee Powder Factory
Upper Paya Lebar Road に位置していますが、駅だと最寄り駅はセラングーン駅。駅から 1kmぐらいとちょっと距離があり、バスでバス停 2つ。いいお天気なら駅からのんびりとお散歩しながらでも。お店の名前 Ho Tit は福建語。中国語では「好的」で、facebook の親指を立てる “いいね” といった意味がいちばん近いようです。

 

コーヒーロースターと言っても、Ho Tit Coffee は主に南洋コーヒーを焙煎するコーヒーロースター。シンガポール独特のローカルコーヒーはご存じの通り、西洋のコーヒーとアジアの文化が融合され独自に発展したコピと呼ばれるシンガポール、マレーシアにしかない現地ならではのコーヒー。コピはコーヒー豆を焙煎する際に、砂糖やマーガリンを混ぜて焙煎することで、独特な深みのある濃い味を作り出します。Ho Tit コーヒーでは南洋コーヒーの他、時代の移り変わりに合わせて、アメリカンコーヒーも焙煎しています。

 

創業当時とほぼ変わらないままのレトロな店構え

 

 

お店の自慢はたくさんあるのですが、まず入口から。創業当時からある鉄製グリルゲートと木製の蛇腹ドア。

 

(左) お父様がお店を閉める様子 (右) 息子さん Domincさんがお店を閉める様子

* 写真は Ho Tit Coffee より提供

 

そしてこのドアを入るとすぐ、ミニミュージアムのようになったスペースがあります。

お店に行くと、コーヒーを淹れてくれ、ここで座って飲んだり、反対側にも大きなダイニングテーブルがあり、お茶菓子まで出してくれてお喋りしたり。

 

今までにテレビ、新聞、雑誌などで多数伝えられており、テーブルの上には掲載された雑誌が置いてあります。

 

今も手作業で焙煎しているコーヒー

 

南洋コーヒーを焙煎する作業は高温と煙にまみれ、想像を絶するものすごいハードな作業で、今もシンガポールで焙煎している所は数えるほどしかなく、南洋コーヒーに使う、バターなどを混ぜて焙煎するコーヒー豆、コーヒーパウダーはほとんどがマレーシアからの輸入です。Ho Tit コーヒーではこのお店の裏に焙煎設備があり、今も手作業で焙煎をしています。ただし焙煎作業によって、煙が多く出て近隣の住民に迷惑がかかるため、店舗内の設備で可能な焙煎は、バターや砂糖を加えないコーヒーに限られており、他の焙煎工場は別の工業地域にあります。店舗内での焙煎は、煙害、衛生管理などを始め NEA(環境庁)による厳しい規則に沿って管理されており、残念ながら一般には公開することができません。

 

焙煎する設備は見られないのですが、お店に行くと裏で焙煎作業をしていることがあり、Dominicさんがヘアネットをして、マスクをして、ものすごい汗をかいて出てきたのを見たことがあります。眼鏡も曇って大変だそうです。

 

2代目ご夫婦 Dominicさん と Cynthiaさん

今回マスク着用のままでも写真を撮ったのですが、2年ぐらい前に撮ったこちらの写真がお気に入りとのことで、奥様の Cynthiaさんから頂いた写真です。

 

ほんとうに人柄の良いお2人で、おしどり夫婦のようなお2人。明るい奥様 Cynthiaさんと、一見穏やかで寡黙な感じに見えるご主人の Dominicさんは、話をしてみると、職人であり経営者であり、芯が一本通っているような強さを感じる方。若い頃はコーヒーに興味がなく、コーヒーを飲むのも好きではなかったという Dominic さん。1985年に、お父様から事業を継いだ時は、コーヒー文化を届けたいというよりも、とにかくお父さんの想いを継ぎたいという気持ちが強かったそうです。シンガポール独特のコーヒー文化を継ぎたいと思い始めたのはそれから徐々に、と話してくれました。

 

コーヒーは世界中で愛される飲物だけれど、シンガポール独特のコーヒー文化はシンガポールでしか味わえない特別なもの。次世代にも、シンガポール以外にも広く伝えていきたいと力強く話して下さったのがとても印象的でした。

 

★ 商品の紹介と、事業を継ぐために取り組まれている事などについて後編に続けます。

 

Ho Tit Coffee Powder Factory
402 Upper Paya Lebar Rd, Singapore 534988

月~土 10:00 – 17:30
日、祝 お休み
facebookページ

 

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イラスト提供 Instagram @singapolah

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