新制シンガポールに向けて ~ ローレンス氏次期首相にほぼ内定

今月 4月に入ってからコロナ後の本格的回復フェーズを着々と進んでいると感じるシンガポール。

 

4月1日 新年度に、ギアチェンジするシンガポールという内容を書き、シンガポールは再びギアを上げて進みつつも、今年はまだまだ大荒波が来て激動の年になりそうだと書きました。この時に含ませた意味があり、今年はシンガポール政治に大きな動きがあるだろう、コロナで延期になっていたリー首相引退について動きがあると考えてのことだったのですが、予想以上に早いアナウンスで、まさかこの 3週間後に動きがあるとは思ってもみませんでした。

 

先週イースター 3連休に入る前日の木曜日午後、リー首相から突然のアナウンス。与党 PAP の 4G リーダーとして Lawrence Wong 大臣を選出したとのアナウンスが発表されました。

 

リー首相による 4月14日時点でのこの発表は、次期首相が Lawrence氏になることを示唆したものでしたが詳細についてはあまり触れず、当初は未知の部分が大きい発表内容でした。

 

リー首相は 2020年の総選挙までに首相引退したい旨を長年話していましたが、コロナの影響で混乱を避けて延期になっていました。その後 70歳までには首相を次世代に渡したいとの意向を示しており、今年 2月 70歳になったリー首相、コロナの状況も落ち着いているこのタイミングを逃さなかった印象を受けました。今、何もかもが不透明で明日何が起きるか分からない時代。コロナが落ち着いても、日々次々と降りかかってくる様々な課題に、重要な事は慎重に進めつつも先送りしない判断が必要と思います。

 

発表から2日後に行われた記者会見

 

最初の発表から 1日空けて 2日後に記者会見が行われ、記者会見で初めて詳細が語られる 2段階アナウンスの形となりました。その会見の中で、リー首相が最初の発表で国民の反応を見たという発言をしていたのも興味深く、3G から 4G への次期首相選出で一度つまづいた背景もあるのでしょう。かなり慎重な印象を受けました。私は 2021年に Heng 副首相が次期首相辞退したのは、良いつまづきだったと感じます。あのまま突っ走った方が危なかったかと…。

 

* 2021年4月に書いた記事
Heng副首相 次期首相辞退で、次期首相選びは振り出しに 

 

3G、4G とはシンガポール政権の世代のことです。

1G 1959-1990 (31年) リークアンユー初代首相
2G 1990-2004 (14年) ゴーチョクトン二代目首相
3G 2004-現在 (18年) リーシェンロン首相
4G 次期首相 ローレンス氏に内定

 

記者会見で語られた次期首相選びに関する詳細について

 

約40分の記者会見

 

■ 首相オフィスによるテキスト全文
Press Conference on the Leader of the 4G on 16 April 2022

 

記者会見に臨んだのはリー首相、ローレンス氏、コウ氏 の3名。リー首相、ローレンス氏は当然ながら、コウ氏が次期首相選出に関わっていたのも興味深い事実でした。コウ氏は 2020年総選挙に出馬せず引退した元 PAP の超ベテラン議員で、Mr FIX の異名を持つ方。彼が大臣に歴任した省庁では前任大臣ができなかったことを実現し、国民の日常生活に関わる不満を解決してきたことからそう呼ばれていた信頼の厚い方です。

 

2020 総選挙の時に、引退インタビューでコウ氏が言葉に詰まって涙ぐむシーンは私も思わずもらい泣きしたのをよく覚えており、久しぶりに動画を見てまたぐっとしてしまいました。(その動画はこちら https://youtu.be/WAy8Z1_UjOc この動画はなぜ MRT駅で話しているかというと、引退前最後が運輸大臣だったからで、一時期 MRT の故障、遅延が何度も続いて大きく社会問題となったのもコウ氏が解決しました。)

   

コウ氏の引退インタビューの中で、年長者の仕事は若手を育てることだと話している通り、コウ氏が次期首相候補選出に関して中心人物となって動いたのは適任だったのでしょう。次期首相選出プロセスに関してリー首相から絶大な信頼を置かれたことが感じられる会見でした。

 

会見でコウ氏がローレンス氏を 4Gリーダーとして選出するに当たり、その選出プロセスを詳細に説明しました。

– 19人の PAP閣僚にコウ氏が個別ヒアリングを実施。1人につき 約1時間のヒアリングを 3週間で行った。
– 次期首相候補として自分以外の名前を挙げてもらい 19人のうち 15人がローレンス氏を選んだ。79% の高確率であり、他の候補者で 2票以上集まった人物はいなかった。(その詳細は匿名であり非公開)
– その上で PAP 党全体へ発表し、閣僚以外の党員からも次期リーダーにローレンス氏を選出することに全面的な支持を得た。

 

次期首相になることについてローレンス氏より

 

記者会見でローレンス氏はいろいろと述べていますが、「これは私の人生の中で最大の責務になる。Now I will be taking on what would possibly be the biggest responsibility of my life.」この一言に集約されていると思います。

    

記者から、選出のプロセスで 19名のうち 4名がローレンス氏を選ばなかったことについてプレッシャーを感じていますかと質問がありますが、大多数に選ばれたことにフォーカスを当て、プレッシャーは感じていないとし、後は受け流している所。4G チームの長所、短所について聞きたいとの記者からの質問にも、長所のみを話して短所については触れずに回答を終える所。どこにどうやって光と焦点を当てるか、さすがです。

    

首相交代はいつになるのか

 

最後に、ではリー首相からローレンス新首相への交代はいつになるのか気になるところ。記者会見でその時期は決まっていないとし、次の総選挙 2025年前になるか、次の総選挙を最後に再びリー首相が 2025総選挙を引っ張ってから、その後手渡すのか、といった話しがありました。またローレンス氏の気持ちが整い次第との話もありましたが、早ければ年内、または来年にはといった流れになるのが多くの人の見方かと思います。

 

ローレンス氏は現在財務大臣ですが、特にこの 1年 財務以外に関するシンガポール全体に関わる発言、発信が多くなっていたので、おそらく首相になるのだろうなと予想はありましたが、正式に発表されたことで、ここからは国民の視点、評価も変わった上で次期首相になる準備が進められていくのでしょう。

    

*

 

新首相誕生に向けて大きく進みましたが、今年のシンガポール政治はまだ波があると見ています。野党党員による国会での虚偽発言から始まり最終的にまだ片付いていない野党 WP の信用問題とその調査、対応について。もう 1つは大統領選挙。大統領に行政権はありませんが、政治と密接に関係していること、国民からの直接投票によって選ばれること、前回の大統領選で大きく波風が立った件もあり、次の大統領選挙の行方が注目され、与党の信用、不信用にも関わってくることなど。大統領は任期来年までありますが、ひょっとすると今年選挙があるかもしれません。

 

引き続き見守っていきます。

 


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