建国記念首相演説 ~ 未来へ向かってまた大きく歩みを進めるシンガポール

8月21日 日曜日夜、リー首相による建国記念首相演説が行われました。この首相演説は毎年 8月ナショナルデー後に行われるもので、シンガポールが進む方向性について短期、中期、長期的な国の方針、計画について発表するものです。

 

この画像と今日の記事サムネイルに使わせて頂いた画像はリー首相公式 facebook よりお借りしました。

 

約2年のコロナ禍で、目先のコロナ対応に翻弄されるような時期もあったりしましたが、それと共にあったのは、シンガポールが常に未来を見据えて描き続けて来たアフターコロナの世界。単に理想を描いてきたのではなく、構想を具体化、現実化させ、また大きく未来へ舵を切り、着々と歩みを進めていくシンガポールを感じる首相演説でした。

 

Straits Times 記事より、「建国記念首相演説で話された 8つのポイント」として簡潔にまとめられていますので、こちらの記事を参考に、私が個人的に印象を受けた点について書き留めました。

 

■ Straits Times 参照元記事
8 highlights from NDR 2022: Masks optional in most indoor settings, Section 377A to be repealed

 

首相演説 8つのポイント

1. マスク着用義務は一部を除いてほぼ撤廃へ
2. 男性同志の性行為を禁止する刑法377条A項を撤廃する
3. 国際的リスクに備える
4. 経済的課題に備える
5. パヤレバ空軍基地移転後の地区開発計画について
6. チャンギ空港ターミナル5とトゥアス港メガポートの建設について
7. 世界から国際的に活躍できる人材を集めることについて
8. 進み続けるシンガポールの未来に必要な 3つの原則

 

マスク着用義務はほぼ撤廃の方向へ

 

2022年4月下旬に大幅規制緩和となった時点で、屋外でのマスク着用は不要 (着用は任意) となりましたが、屋内でのマスク着用義務は継続となっていました。今回、公共交通機関と医療機関で着用継続が残りますが、それ以外は屋内飲食、ショッピングモールを始め、学校での着用も不要となります。

 

ただし MTF (Multi-Ministry Taskforce) 対策本部からの公式発表を待ってくださいとのことで、マスク不要の開始日は現状未発表のまま。これまでの流れでは、首相発表の直後に対策本部記者会見で公式発表でしたが、めずらしく待たせる展開に。

 

マスクに関して、着用しなくて良い!の発表に嬉しくないわけではないものの、これと言って嬉しいといった感じでもなく、すっかりマスク着用に慣れきってしまった現実もあります。人間の慣れとはものすごい適応能力です。また時間をかけてマスクがない日常に戻るのでしょう。

 

男性同士の性行為を禁止する刑法 377条A項を撤廃

 

首相演説はコロナ禍での内容から始まり、その流れでマスク着用撤廃の発表となりましたが、私はマスクの件よりもそれ以外の内容のほうが圧倒的に印象に残りました。中でもこれまで様々な議論が交わされてきた 377A の撤廃について、首相演説の中でかなり長い時間を使って丁寧にこの内容について話したことは意義深く、表面的には 377A の撤廃でありますが、多面的、長期的な視点で見ると今後シンガポールがどんな未来をつくっていくのかを示す意思表示であったと思います。

 

刑法 377条A項 とは男性同士の性行為を法律で禁止するもの。分かりやすく言うと、男性同士でセックスすると法律違反で刑務所に入れられる (最大 2年の刑) そんな法律があるの、マジか! といったものですが、植民地時代の 1930年代、古い慣習のまま制定された法律を今までずっと引き継いできた中、それはプライバシーの侵害である、ホモ、ゲイにも人権があり、人間として多様な生き方があって当然といった現代になり、この法律を残すか残さないか長年話し合われてきましたが、撤廃することを発表しました。

 

シンガポールは先進国として成熟した社会でありながら、その反面、国民は華人、マレー系、インド系とアジア人らしい保守的な面も大きく持ち合わせており、宗教的、社会的側面などからも同性愛に関して保守的でもあり、男性同士の性行為を法律で禁止しないこととなりましたが、結婚については男女間に定義することに変更はないとしました。

 

欧米を始めとして同性婚が認められる社会になったり、LGBT の権利が叫ばれる中での動きの 1つであり、シンガポールが独立以来掲げてきた民族、言語、宗教に関わらずどんな人も平等の社会は、現実社会ではとっくに民族、言語、宗教以上の平等の壁を越えています。それでも多様な人がどうやって人間として同じように平等に生きる権利を与えられるか、これはどんな人も平等であることにこだわり続けてきたシンガポールの大原則であるからこそ放っておけない重要な課題。

 

何かしらのマイノリティが声を上げることは普通です。平等とは不便を感じていないマジョリティがマイノリティについて議論し、行動を起こして変えていくこと。簡単じゃないです、すごく大変なことです。今回の首相演説の中ではないですが、リー首相は、シンガポールの平等は完璧ではないながらも努力し続けていると発言しています。民族、言語、宗教において平等であることを実践し続けてきた国であるからこそ、リー首相が演説でこの点について深く触れたことについて、人が平等に生きる理想郷を創ろうとするシンガポールの姿勢の 1つであると私は感慨深く感じました。

 

3. 国際的リスクに備える
4. 経済的課題に備える
5. パヤレバ空軍基地移転後の地区開発計画について
6. チャンギ空港ターミナル5とトゥアス港メガポートの建設について
7. 世界から国際的に活躍できる人材を集めることについて

についても大切な話、シンガポールの楽しみな未来の計画について話しがありましたが、長くなるので 3~7 については省きます。

 

進み続けるシンガポールの未来に必要な 3つの原則

 

コロナ、ウクライナ情勢、インフレ…シンガポールが直面する国内外の様々な課題に取り組むための 3つの基本原則は、

united people 国民の一致団結
high-quality leadership team 質の高いリーダーシップ
high trust between the people and their leaders 国民とリーダー間の高い信頼関係

 

と話し、特に政治における強力なリーダーシップが重要であり、次期首相に内定しているローレンス氏への強い支援を呼びかけました。私は今回の首相演説の中で、リー首相引退とローレンス氏の首相就任について具体的な日程を示すのではないかと思っていましたが、ここでもう一度国民の反応を伺う手堅いやり方になったと言えます。

 

首相演説の全内容はこちら

 

首相オフィスによる演説テキスト全文

 

どの国も不透明で先行きが分かりにくい今、国のリーダーが国民に方向性を示し勇気づけ、ナショナルデー後の建国記念にふさわしい首相演説でした。

 


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