ローカルフードがお好きな方は食べたことがあると思いますが、日本人にはあまり馴染みのないローカルフード、ツイクエ。在星数年の方も、お友達や現地の方に美味しいと聞いたなど、何かきっかけがなければ、なかなか食べてみようとは思わないかと思います。
中国語では水粿。「粿」はケーキの意味があり、米粉と水からできているケーキなことから 英語では Water cake, Water rice cake と訳されたり。Water rice cake と聞いてもちょっとピンと来ないですけれどね。ツイクエはチャイニーズの中でも潮州の食べ物で、シンガポールでは潮州語で Chwee Kueh 、Ch の音ははっきりとした「ツ」ではなく、ツにチが少し混ざったような「ツ」の音で、ツィークエと書いた方が実際の音に一番近いと思いますが、読みにくくなるので、ツイクエと書きます。
ギンモーホーカー内にあるツイクエ屋さん。1959年からの歴史があり、特にこの辺りでは人気のあるツイクエ屋さん。お客さんはほぼ常連といった感じ。
李老三 傳統水粿 – Ghim Moh Chwee Kueh
Leeさんご夫妻が経営されているお店。ご主人はツイクエを作って 60年以上とのこと。お母様がプッシュカート(ワゴン販売のようなもの、看板にイラストが入っています) でツイクエの販売を始めた頃、Leeさんはまだ子どもだったそうです。その頃の写真はお店の外の壁に大きなパネル写真があります。
我が家からはちょっと遠く、なかなか気軽には行けないのですが、美味しいローカルフードが揃っているギンモーホーカー。久しぶりに行って、そうだ ツイクエ買って帰ろう！ と思いお店に立ち寄りました。お店に行くとちょうどツイクエを作っているところだったので、買ってからそばで見ていたら、見ていきな！ とおじちゃんが声をかけてくれました。
お店の中にまで入れてもらい、買う立場での視点でしか見たことがなかったので、たった数歩内側に入っただけで、そこにはツイクエを作る人の世界があり、買う人とはまったく違う視点があることに驚きました。
積み上げられたツイクエ用のアルミ製の型がよく店頭に置かれています。これは全部空で、これから作る分。
丸型のトレイの上にツイクエの型を並べ、米粉液を流し入れます。お姉さんがお手伝いされていました。
これは店内から撮った写真。
全部で 1560数個と言っていたので、細かくは聞きませんでしたが、写真からざっと見ると 1つのトレイに60個ぐらいを 25トレイ準備して 1500個。
積みあがっていたスペースが空になった状態。
全部のトレイに液体生地の流し込みが終わり、これから特大の蒸し器に入れます。スチームは何分かかるのか聞いたところ 30分。時間あるならできるまで見ていきなよ！ 時計を見て時間があったのもそうですが、すっかりツイクエの世界に魅せられ、コピを買って待つことにしました。じゃぁ私コピ買ってくるから何か飲み物買ってきましょうか？ と聞くと、いいの、いいの、ここに飲み物あるからと、お店の端の方に置いてあった蓋つきのカップを指差すご主人。
お礼にコーヒー 1杯ぐらい買いたかったのですが、自分のだけを買ってきて、お店の前の席で座って待ちました。
ご主人が作る役、奥様がお客様対応とお店での役割はしっかり分かれているようで、この間、奥様はずっと次々と来るお客様に対応していらっしゃいました。お客様が途切れた時に何度か話しをさせてもらいましたが、奥様はちょっぴり控えめながらとても優しい方。しっかりお店を守っているといった感じでした。
蒸し上がるまで 30分ありましたが、手が空いてからご主人がちょっと休憩をかねて座った時に話をしてくれました。小さな頃からお母さんが売るツイクエの手伝いをして、ツイクエの作り方を習ったこと。お店の名前、李老三は 7人兄弟姉妹の中で 三男の意味とのこと。いろいろなことを話してくれました。
ツイクエは潮州の食べ物なので、私はご主人に潮州人ですか？ とたずねました。そうだよ！ 私の夫も潮州なんですと言うと、そうか Teochew か！ と嬉しそうな顔をしてくれました。チャイニーズの方は皆同じように見えるかもしれませんが、日本人でも出身地が同じだとそこから話がはずんだり、親しみが湧くのと同じで、華人シンガポール人でも同じなのです。
ご主人 : あと 5分だよ。
あっという間の 30分でした。
特大スチーマーが開くところから、後編に続けます。
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イラスト提供 Instagram @singapolah
