NDR – National Day Rally 毎年8月後半、ナショナルデー後に行われる首相演説がありました。中長期に渡るシンガポールの今後について首相が話すもので、シンガポールが今後どのように進んでいくのか、どんなことを目指しているのかが読み取れる重要な演説です。
過去の首相演説では、チャンギジュエルを建設する発表があったり。その計画は着実に実行され、ジュエルはすでに開業しているのはご存じの通り。様々な新しい政策の発表、そして明日から実施します! と驚かされるようなこともありました。コロナ前の 2019年首相演説では、セントーサ島を含んだ南海岸一帯の大々的再開発構想も発表されました。
昨年はコロナ禍真っ只中で NDRは中止、その代わりに国会開催中に首相が国会内で NDR に相当するスピーチをしました。コロナ禍 2年めの今年は、国内の社会問題、国民に密着した課題、シンガポールが根本的に持っている多民族社会、多様な社会の実現と維持に関する話題が多かったです。コロナ以前のような 〇〇を新たに建設します、〇〇の政策を新たに始めます、といった具体的発展を感じるものではなく、どちらかと言うと内向きな印象はありましたが、こんな時だからこそ原点に返って、今後シンガポールがどう発展し続けるのか、国としてどうあり続けるのかを問い、国民にとってそれを考える良いテーマ、演説だったと感じます。
■ 首相オフィスによる NDR 2021 首相演説の全文テキスト
外国人 (移民) 受入れにより、国民が感じている雇用面、職場での差別感、不安、不満が、コロナによる経済的不安定でコロナ以前にも増して大きくなっていることに触れて。シンガポールはハブ都市、国際都市として、世界中から有能な人材が必要であり、受け入れが必要。世界に開かれ、世界的競争力の高い都市であるからこそ、外国人の受け入れは今後も続けていくとした上で、EP、Sパスの基準は、今後も厳しくしていく。専門性の高い外国人に絞って受け入れるといった発言があり、国民に向けて国民優先をアピールした形となりました。
この件は 2000年後半(2010年前後) 頃から年々難しい課題となっています。外国人向け雇用ビザの厳格化だけでは対応できなくなっている現実があり、厳格化を進めたら国民が幸せになるかと言えばそうではなく、この先息詰まることが見えているので、国民も外国人もハッピーで win-win になれる、もっと発想転換した大胆な政策がとれないものかと感じます。
いづれにしても、外国人にとって引き続き雇用ビザ、PRの取得などが厳しいことに変わりなさそうです。
シンガポールは独立以来、多民族社会を実現してきましたが、近年「多民族」は「多様」に代わり、多民族 Multi racial はもちろんのこと、更に高度な inclusive society になり、民族、宗教、言葉の違いだけでなく、障がいやジェンダー問題なども含め、あらゆる個人の違いを認めつつ、全ての人が平等に扱われる社会の実現を目指しています。とても難しいことで、勝手に出来上がるものではなく、並々ならぬ努力が必要なことです。
リー首相はスピーチの中でこう話しています。
” Racial harmony did not happen spontaneously in Singapore. It took hard work, sacrifice and wisdom. Our founding fathers resolved to forge one nation from the different races. They made multi-racial equality and harmony a fundamental principle of nation building. ”
民族の調和は、自然に出来上がったものではありません。多大な努力と犠牲と知恵が必要です。私たちの建国の父が、異なる民族から 1つの国を作り上げると決意しました。そして、多民族の平等と調和を国家の基本原則としたのです。
この約2年のコロナ禍も含め、これまでの浮き沈みにも立ち向かってきたように、これからも力を合わせて挑戦していける国民でありましょうという呼びかけ、またそうあるためには全ての個人がどうあるべきか? を問われる内容でした。全体的に、人々の求めるものが複雑に高度化していて、今まで以上に難しい時代に入っているのを感じましたが、首相が Majulah Singapura 「進めシンガポール」の言葉と力強い握りこぶしで締めくくったように、どんなに困難な状況にあっても、これまでも、これからも進み続けるシンガポールであることを願わずにいられませんでした。
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