シンガポールで消えゆくもの ~ 時が止まったような最後の日用雑貨店 (2)

私は Angさんとお話しをしながら、時折やって来るお客さんを見ていましたが、楽しくてとても微笑ましい時間でした。

 

この辺りは戸建ての家が建ち並ぶいわゆる高級住宅街で、お店にやってくるお客さんはどんな顔ぶれかというと。戸建てのお宅で雇われているメイドさん 4割、近くで集合式の戸建て住宅を建設中のワーカーさん (インド系、中華系) 4割、その他 2割の方は、ご近所の方、Singpost の郵便配達員、デリバリ途中でこの辺りによく来る配達の方、といった感じで、みなさん常連客ばかりでした。

 

インド系のワーカーさんがちょくちょくやって来て、休憩時間なのでしょうか、皆さんお菓子や飲み物を買っていきました。

 

おもしろかったのが、華人、インド系、マレー系、民族に関わらずコンスタントに売れるいちばんの売れ筋商品ががこちらでした。

 

RedBull !

 

お店に来るほとんどの方が買っていくので、私はそばの棚の上に置いてあった在庫 ( 冷えていないやつ ) をファーストインファーストアウトになるようにして冷蔵庫に入れました。

 

メイドさんが買い物に来て生理用品を買って行ったり。

 

Angさんは、お客さんのことをよく理解していて、インド系の方が来るとタミル語、メイドさんはフィリピンの方にはタガログ語、インドネシアの方にはインドネシア語 (マレー語とは似てるけれど違うんだ!と話されていました。まさにその通りで、インドネシア語とマレー語は似ていますが違います。) 華人の方が来ると、今の人は海南人で今話してたのは海南語だよ、と。

 

日本人のお客さんはいないから日本語は話せないけど、いつも来るお客さんがいればその人から習って何でも話せるよ、と得意気。そうやってコミュニケーションをとりながら日々を楽しんでいるのを感じましたし、こうして頭を動かすことがいいんだよ!だから商売を続けていられるのだと話してくれました。

 

お店の外には石のテーブルと椅子があって休めるようになっていて、思い思いに座ってのんびりしていく人、休憩するメイドさん、ワーカーさんの姿が見られました。

 

ゆっくり過ごしているうちに、友人の油絵スケッチも出来上がりました。

おぉ! 絵のなかに私もいる!と嬉しそうな Angさん

 

私が、じゃぁそろそろ帰る準備をしますと言うと、そうだこれ見て、と Angさんが見せてくれたのがつい最近の新聞。QR コードをかざすと Youtube に飛ぶようになっていました。最近、早報 Zaobao ( 中国語新聞で StraitsTimesの中国語版といえるメディア媒体 ) で取材されたのだそうです。

 

全部で 10分の動画、7分30秒以降はエンドロール。中国語ですが英語の字幕があります。

 

私がその日 Angさんに聴いたこととほぼ同じことが動画の中でも話されていて、じーんとしました。

 

ゆっくりさせてもらったことのお礼を伝え、最後に私も RedBull を買ってみようかと思いましたが、思いとどまってりんごジュースにしました。笑 このりんごジュース、ホーカーやコーヒーショップに缶のは多く流通していますが瓶は見かけないです。ちょっと炭酸がきいているんです。日頃コピかウーロン茶しか飲みませんが、ここで飲む炭酸りんごジュースが美味しかった!

 

 

Angさん、どうもありがとう。また来るね! とお店を後にしました。

 

Tee Seng Store
31 Rosyth Rd, Singapore 546191
毎日 8:00 – 20:00
お休みはなく毎日お店を開けるそうです。

 

通り沿いに看板が出ているわけではないので、そこにお店があると知っていないと見逃してしまうような所です。周囲の住宅も元々は Angさんのご自宅兼商店と同じような昔ながらの家屋で、辺りは舗装されていない道だったそうですが、現在、周りの住宅は改装、改築を重ねてきらびやかな高級住宅ばかり。様変わりしたと話されていた Angさんですが、車も人の通りも少なく、閑静な住宅街をゆっくり歩いていると、舗装されていない道が見えてくるような気がしてきます。

 

 

この場所で言葉と心を交わすことが Angさんが毎日元気でいられる秘訣なんだろうなと感じる時間を過ごさせてもらいました。飲み物はホーカーよりも安くて、もうちょっと値上げしてもいいよと思うお値段。Angさんを訪ね、お店でお菓子や飲み物を買って Angさんとお話ししてみて下さい。英語でお話しできます。

 

Tee Seng Store 1話はこちら

 

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イラスト提供 Instagram @singapolah

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