イスラエル・ハマス紛争 ~ イスラエルとシンガポールの外交関係

長引くロシア・ウクライナ侵攻が収まらないうちに始まった次の争い、イスラエル・ハマス紛争。世界はどうしてしまったのだろう…

 

平和のためにできることって何だろう… などと考えさせられつつ。ロシア・ウクライナが始まった時もそうでしたが、イスラエル・ハマス紛争では、それ以上にこの紛争に敏感にならざるを得ないシンガポール。シンガポールとイスラエルの関係性、そしてシンガポールとしての立ち位置、周辺国との関係などについて書いておこうと思います。

 

シンガポールの外交政策

 

シンガポールの外交は、どこの国の側にもつかず、世界中のどこの国とも仲良くする中立姿勢です。地理的、歴史的、政治的、文化的、様々な事情と背景が重なって、中立的立場をとることが、小さな国シンガポールが世界の中で生き残れる最もスマートなやり方であるから。

 

イギリス植民地だった歴史と英語を公用語として取り入れたことで、アジア人でありながら、ビジネスや文化面で西洋を理解する部分も持っている。華人が大多数の国だから大国の中国ともうまくやっていける。更にインド系要素も持ち合わせていて、お隣のインドネシア、マレーシアともうまくやっていける要素もある。外交がどうとかいう以前に、違う人を理解するのに同じ言葉を話せるかどうかは、文化や言葉の違う者どうしがうまくやっていけるかどうかの大きな要素だと思います。

 

シンガポールを国としてではなく 1人の人間として見たら、いろいろな言葉を話せて、違う文化や宗教を理解できたり、マルチ能力を与えられたトップクラスの優等生のよう。優等生は与えられた能力をフル活用して、皆の間に入って誰かと誰かの調整役を引き受けたり、リーダー的存在になったり、皆と公平に仲良くするって本当に難しいことだと思います。優等生ってほんとうに大変だなぁ…と他人事のように見えることもありますが、複雑な世界の中で、理想的な姿勢を見せようとするシンガポールのあり方は、まさにお手本のような優等生の姿。まぁ、スマートに見せつつ、その内面はしたたかでもあり、戦略的に計算されつくされていたり、どろどろだったりもするわけで、国と言っても人間がやっていることですから。それも含めてやはり優等生的なあり方の国です。

 

2018年 歴史的な米朝首脳会談がシンガポールで行われ、シンガポールにトランプ大統領と北朝鮮の金総書記が訪れたのも、安全を確保できる環境が揃っていて、中立国であるシンガポールが選ばれました。あの時は、開催国としてシンガポールが選ばれたのが決まった時から、もの凄い流れだったことを思い出します。オリンピックとは言わないけれど、世界が注目するメジャーなワールドカップがシンガポール開催に選ばれたのと同じような注目がありました。また毎年行われるシャングリラ会合 (アジア安全保障会議) でアジアを始め海外各国からの国防幹部が一堂に揃うのも中立を保つシンガポールであるがこそ。

 

イスラエル軍によるシンガポール軍への軍事指導援助

 

先に書いた通りで、シンガポールはイスラエルとの外交関係も良好です。1969年 両国は正式に外交を樹立しましたが、それ以前、シンガポール独立直後の 1965年からすでに両国の関係は水面下で始まっていました。特にシンガポール独立直後の、イスラエルによるシンガポールへの軍事協力に関する歴史は特筆する面が多々あります。

 

シンガポールは独立直後、自国を守るための軍事力がなく、今のような空軍機も戦闘機もないし、木製のボロ戦艦が 1つだけで、ゼロから軍隊を立ち上げる必要がありました。戦争で日本軍に占領された歴史もあり、この土地は自分たちで守るという決意のもと軍事力を急速に増強します。そこで、シンガポール軍発足初期の訓練、指導など、軍事協力をお願いしたのがイスラエル軍でした。

 

これにはちょっとした経緯があり、イスラエルに軍事協力をお願いする前に、インド、エジプトにも支援を打診していました。しかし、インド、エジプトからの返信がなかったために、イスラエルからの支援を受けることに踏み切ったのです。当時から今でも隣国のマレーシア、インドネシアはイスラム教徒が多数を占める国のため、イスラエルと国交がありません。ですから、シンガポールにイスラエルが軍事協力をすることは、隣国からの怒りや反感を買うため伏せておきたく、このミッションは水面下で進められ、支援をするためのイスラエルからの軍事団は、メキシコ人としてカモフラージュされました。

 

イスラエルとシンガポールは、周辺をイスラム教の国に囲まれながら、異彩を放つ国という点で共通していることと、イスラエルによる軍事支援の歴史は、シンガポールにとって深い恩がある国なのです。近年は、軍事面に限らず、テック関連、サイバー技術、知識など、経済面でも幅広く密接で良好な関係があるのはご存じの通りです。

 

今回のイスラエル・ハマス紛争に当たってシンガポールのコメント

 

イスラエルと良好な関係にあるシンガポールですが、イスラエル側だけに偏った立場は取っておらず、以前よりイスラエルにパレスチナと平和的な解決をするように求める姿勢をとってきました。それは以前も今も変わっていません。

 

2023年10月16日 イスラエル・ガザ地区情勢に関する外務省コメントを発表

 

全文はこちらシンガポール外務省のサイトで見ることができます

 

和訳はしませんので、関心のある方は原文をご覧ください。おやっ? イスラエル寄り? とも受け取れる文章が一部あり Israel has the legitimate right to defend its citizens and its territory. の部分ですが、正当防衛のことを言っているのであり、イスラエルによるハマス攻撃を支持しているわけではありません。ただし、読み手によってどう受け取るか人によって解釈はそれぞれであり、ちょっと複雑な心境にもなりました。しかしながら、シンガポールはこれまで通り中立的姿勢をとっていることに変わりありません。そしてお隣りのマレーシアはアンワー首相がイスラム教の同胞として、パレスチナの人々を支持する表明を出しています。このこともまた複雑な気持ちになりました。

 

*

 

シンガポールで民族、言語、文化、宗教を持つ異なる人たちが、違いを認め、平和に共に暮らしていることが、とても尊いことだと感じます。こんなことをあれこれ書いても紛争が終わるわけではないけれど、地球の住人の 1人として小さくても平和に貢献できることがいっぱいあると思うので、うまくまとまるか分からないけれど、もう少しこの続きを書こうと思います。

* 前回アンモキオについて書いて、その続きをまた。で終わりましたがアンモキオの記事、ちょっと中座します。10月末~11月頭頃までには続きを書けると思います。  

 

独身で 20代の頃ですが、エルサレムを旅したことがあり、キリスト教、イスラム教、ユダヤ教 3つの聖地を訪れました。911 NYテロの前の年 2000年でした。当時はまだ若くて国際情勢などよく分かっていなかったけれど、イスラエルに入国する時に、イスラエル入国のスタンプがあると、周辺のアラブ諸国に入国できなくなるので、別紙に入国スタンプを押してもらったり。そういう体験が貴重だったなと思い出したり。教会、モスク、ユダヤ教の嘆きの壁… 神聖な場所が多くて人々の信仰心に驚いたことだとか…。旧市街の石畳の通りなど想い出します。

 

エルサレム 岩のドーム。当時はスマフォもなかったし、デジカメを持ち歩いていた頃。

  

いつも通りいたって元気なんですが、無力を感じる切なさ…。

  

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