人生の宿題の答えを求めて、葬儀屋さんツアーに参加。
訪れた葬儀社はトアパヨにある Flying Home Flying Home のネーミングと葬儀社は結びつかないかと思いますが、お話を聞いて納得。シンガポールでは現地の方向け葬儀社はたくさんあるのですが、外国人がシンガポールで亡くなった場合、またはシンガポール人が海外で亡くなった場合、母国へご遺体の国際搬送ができる葬儀社は数社のみとのこと。Flying Home はその取扱いができる数社の 1つ。
Flying Home は会社名ではなく、母体は ANG CHIN MOH という葬儀社のブランド名で、ANG CHIN MOH の国際搬送部門といった位置づけ。Flying Home は知らなくても ANG CHIN MOH と聞けばシンガポールの方なら葬儀社だと知っている方が多いと思います。
外国人がシンガポールで亡くなった場合、シンガポールで火葬にするか、ご遺体を母国へ搬送するか、どちらかの選択になります。火葬の場合も Flying Home で一連のサポートをしますが、ご遺体を母国に搬送となると手続きがより煩雑になることと、より費用がかかります。Flying Home では、様々な選択肢の提案、より低価格な選択肢の提案の他、搬送に関する事務手続き、輸出許可などをすべて請け負い、経験豊富といった印象を受けました。
スタッフの方から説明を受けました。
火葬を選んだ場合、できるだけ軽量にして遺骨を持ち帰れる選択肢として、手前の白い卵型のようなものが遺骨を入れる物。持ってみましたがプラスチックのように軽いものでした。その右側、緑色で筒形のものも遺骨を入れる物で、厚紙のような素材でできていました。女性スタッフの方が手に取って説明している大きな貝型のものは、海洋散骨用。そのまま海に流せるように自然分解される素材でできています。
写真の後方に少しだけ写っているのが竹製の棺。国際搬送する場合、重量を抑えることができるそうです。内側も見ましたが、足側がすごく細いつくりになっていて、私のサイズでも窮屈なのでは? と思うほどスリムな設計。大きい人はこれに入りますか? と聞いたところ、写真に写っている青いシャツのガイドさん、恰幅の良い方ですが、あなたでも確実に入るから大丈夫ですと言っていました。
一般的な棺もディスプレイされていました
葬儀社の副会長さんが私たちに直接お話をして下さり、とても意味深いお話をたくさん聞きました。印象に残った点を少しだけ。
● シンガポールの場合多宗教で、子どもたちが結婚して家を出ると、家族それぞれ違う宗教になることが多く、当人がどの宗教式で葬儀をしたいかなど、早くから家族で話し合っておくことが大切。「死」について話すことはタブーとされがちだけれど、そんなことはない。
● シンガポールは高齢化社会になりつつあり、葬儀業界のさらなる整備、改善と向上が必要。法整備や政府による大きな介入も必要で、政府と話し合える場が必要。訪れた場所 (Flying Home) は、3年ごとのリース契約になっていて、場所に関して長期に渡ってビジネスができる保障がなく、いつか移転しなければいけないリスクを考えると、大きな設備投資ができない。
参加者の方々からたくさんの質問も出てきました。シンガポールで何度か葬儀に参列してずっと不思議に思っていたことを私も聞いてみました。
私 : (私は日本人なのですがと話して) 日本では火葬が終わるまでその場で待ちますが、シンガポールでは火葬にかかる時間は長いのですか?
* シンガポールでは火葬まで見送った後は帰って、翌日に近親者数人だけで収骨することが多いのです。
副会長 : 火葬にかかる時間は日本もシンガポールも同じ。シンガポールではその場で待つ習慣がないだけ。シンガポールでは午前中に火葬の場合、同日午後に収骨可能ですが、午後に火葬の場合は翌日になります。(日本の葬儀のことや、日本での火葬の流れもよくご存じでした。)
他に、葬儀屋さんで働いているとガールフレンドをつくったり、結婚するのが難しかったりしますか? という面白い質問もありました。
最後に、ご遺体に防腐処理をするお部屋を見学しました。そのお部屋は亡くなった方への敬意をこめ写真撮影は禁止。シンガポールは暑いため、ご遺体が傷まないように防腐処理を施します。日本で行うものはもっと簡素な処理だそうで、シンガポールでは体液を抜いたり大掛かりな処理をするとのこと。それでも 1時間ぐらいで終わるとのことでした。
処理をするお部屋に入ってみて、決して気持ちのいい感じがするものではありませんが、とても清潔な印象を受けました。薬品のボトルなどがたくさん置いてあったりして手術室みたいなイメージかな。
*
全体的にスタッフの方々、会社がとても明るくオープンだったこと。終始丁寧でプロフェッショナルな印象が強かったこと。葬儀社のイメージが大きく変わりました。「死」はどうなるのかが分からないから怖かったりする部分がありますが、自分で見て、こうなるんだというのが分かっただけで、私にとっては不思議と安心を感じるものでした。
もしシンガポールで万が一のことがあった場合、会社、病院、周りの方が助けてくれると思いますが、こういった葬儀社があることを 1つ知っているだけでもずいぶん違うと感じました。
この葬儀屋さん訪問で、私の人生の宿題は大きく進んだように感じます。
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イラスト提供 Instagram @singapolah