数字で分かる ~ シンガポールは独裁政治と言われるけれど実のところどうなのか

シンガポールの政治は独裁政治、一党独裁とよく言われます。それも確かに事実ではありますが、近年はそうでもなくなっている側面もあり、実際のところどうなのか? 過去の総選挙の結果から紐解いてみました。

 

過去の選挙結果を数字で見てみると、興味深い事実も見えてきました。

 

2015年総選挙の得票率

 

* データは政府機関 Elections Department 総選挙に関する公式情報を参照

2015年総選挙は全部で29選挙区

得票率 (%)
選挙区 PAP WP その他

野党

1) Aljunied 49.04 50.96
2) Ang Mo Kio 78.64  21.36
3) Bishan-Toa Payoh 73.59   26.41
4) Bukit Batok 73.02 26.98
5) Bukit Panjang 68.38 31.62
6) Chua Chu Kang 76.91 23.09
7) East Coast 60.73 39.27
8) Fengshan 57.50 42.50
9) Holland-Bukit Timah 66.60 33.40
10) Hong Kah North 74.76 25.24
11) Hougang 42.34 57.66
12) Jalan Besar 67.75 32.25
13) Jurong 79.29 20.71
14) MacPherson 65.60 33.59 0.82
15) Marine Parade 64.07 35.93
16) Marsiling-Yew Tee 68.73 31.27
17) Mountbatten 71.86 28.14
18) Nee Soon 66.83 33.17
19) Pasir Ris-Punggol 72.89 27.11
20) Pioneer 76.35 23.65
21) Potong Pasir 66.39 33.61
22) Punggol East 51.77 48.23
23) Radin Mas 77.25 22.75
24) Sembawang 72.28 27.72
25) Sengkang West 62.13 37.87
26) Tampines 72.07 27.93
27) Tanjong Pagar 77.71 22.29
28) West Coast 78.57 21.43
29) Yuhua 73.55 26.45

*  空欄部分はその党から出馬していない意味になります。
*  WP以外の野党はその他野党でまとめました。

 

2015年総選挙まとめ

PAP得票率 野党合計得票率
約68% 約32%

– 野党が勝った選挙区はピンク色の2選挙区のみ。
– 全ての選挙区で約2~4割の層が野党を支持していることが分かります。

 

PAP獲得議席 野党獲得議席
83 6

 

 

独立直後1968年~1980年の得票率

 

ぐぐっと時間をさかのぼって、1965年シンガポール独立後、初めて行われた1968年の選挙結果を見てみると、1968年選挙区は58選挙区。今よりもちょうど倍の選挙区がありますが、当時は全てが小選挙区制(1つの選挙区から1人を選出)だった為。

 

1968年総選挙では、58選挙区のうち 51選挙区は野党からの出馬がなく、無投票でPAPの勝利となっています。残りの7選挙区においても、PAPが8~9割の得票率を取っており、1980年まで野党の議席が存在しません。

 

1968年以降、毎回の総選挙で野党からの出馬は増えていますが、PAPが7~8割の得票率で圧勝する状態が 1980年総選挙まで続いていたことが分かりました。このことから 独立から1980年までの約15年間、リークアンユー氏の影響力が非常に強かったことが分かります。

 

1984年以降の得票率

 

PAPの得票率に変化が見られたのが 1984年の総選挙からでした。それまで PAPの得票率が 7~8割あったのが、1984年総選挙で初めて6割台に落ち込んでいるのが分かりました。

 

境目となっている1980年と1984年を比較すると分かりやすいです。

PAP得票率 野党合計得票率
1980年 約78% 約22%
1984年 約65% 約35%

 

リークアンユー氏首相時代がほぼ終わりの頃から変化が現れ始めていることが分かります。初代首相リークアンユー氏は1990年まで就任。第2代首相 ゴーチョクトン氏は 1990年~2004年就任。現在の第3代 リー首相は2004年から。

 

【過去総選挙実施年一覧表】

– 総選挙は1965年の独立以降12回行われており、今年は13回目。
– 独立前の3回は自治州政府として行われた選挙。

Elections Department 総選挙に関する公式情報参照

 

野党からの初当選は1981年

 

野党から初当選が出たのは、1981年の補欠選挙が独立後初めての事。その後の総選挙では毎回野党から当選者が出ているとは言っても、全議席のうちの 1、2議席にとどまり、1991年に初めて4議席に増え、近年では2011年総選挙、2015年総選挙と2期10年に渡って、野党から6議席をとったのが過去最高。今年の総選挙でも野党がどれだけ議席を確保するのかが注目されるところです。

 

* シンガポールは一院制で、議席数は各期によって違います。2015年総選挙による現在の、選挙選出による総議席数は89議席。2020年の選挙選出からの総議席数は93議席になる予定です。

 

過去リークアンユー時代は独裁政治だったと言えますが、現在は独裁から与党優勢といった時代になり、時代の移り変わりと共に国民の価値観も多様化し、数字から国民が独裁を望んでいないことも分かります。1990年に導入された Nominated Member of Parliament 指名国会議員制度もあります。指名国会議員はどの政党にも属さず、選挙で選ばれるのではなく、広く公共サービスに貢献した国民から選ばれ、大統領が任命します。パラリンピック選手、チャリティ組織に長く従事している方など 少数派の多様な声を国会に届けることを目的としています。

 

明日 6月30日は 今回の総選挙の立候補者が正式に出揃います。静かに熱い日になりそうです。

 

バナーをクリックで応援お願いします!

にほんブログ村 海外生活ブログ シンガポール情報へ
にほんブログ村
イラスト提供 Instagram @singapolah

右上角の赤いメニューから、読者登録ページで Email アドレスを入れて頂くと、ワードプレスのシステムより記事が更新された時に、お知らせが届きます。アメブロの読者登録機能と同じです。どうぞご利用ください。