多民族国家シンガポール。宗教、言葉、文化もさまざま。
チャイニーズ、マレー、インド、それぞれの言語があって、共通言語は英語。それと同じように、各民族にはそれぞれ独自の暦 (こよみ) カレンダーがあります。チャイニーズは旧暦、マレー系はイスラム暦またはヒジュラ暦、インド系はタミル暦。タミル暦はインドのヒンドゥー暦の中でもタミル系民族の方が使うものです。みんなの共通言語が英語であるように、みんな共通のカレンダーは西暦です。
と、話したり説明することはあっても、これまでイスラム暦、タミル暦のカレンダーを実際に手にしたことはありませんでした。
チャイニーズの旧暦については、我が家でも日常的に使うので 2020年10月に記事にしたことがあります。
■ 旧暦 ~ 華人社会の日常生活で使われている旧暦
昨年 11月下旬、お友達のサントッシュさんから頂いたメッセージ。( 日本人の方ですがニックネーム、ご本人にサントッシュさんと書いていいと OK いただいてます! 😊)
サントッシュさんが 11月末に本帰国される直前。おみやげで旧暦カレンダーを買ってきてほしいとリクエストを受けているとのこと。華人系はもとより、マレー、タミルのカレンダーも入手したくどこで買えますか? とのご連絡。チャイナタウン、ゲイランセライ、リトルインディアというレベル感でしか思いつかず…。
とご連絡頂いたので、私のレベル感も同じです!(笑) とお返事。旧暦カレンダーはあちこちで売っていて、特に仏具店にあるのと、インド系のカレンダーはリトルインディアのインド雑貨店 Jothi にあるかもしれないので見に行ってみてと伝え、イスラムカレンダーはどこで買えるかさっぱり分からずムスリムのお友達に聞いてみたところ Joo Chiat Complex にあるイスラムの本屋さんにあることを教えてもらいました。
と、友人からの連絡がきっかけとなって、私も後日カレンダー探しの旅へ出かけ、面白い発見の連続となりました。三大民族のカレンダーについてまとめます。
旧暦カレンダーは入手しやすく、各地のマーケットがあるエリアに行けば雑貨店、雑誌や新聞を並べて売っているようなスタンド、金紙店と呼ばれる仏具を扱うお店などに置いています。11月に入る頃から見かけるようになり、旧暦新年頃まで出ています。
こちらはチャイナタウンコンプレックス 1階で。行った時ちょうどカレンダーを並べる作業をしていました。
手のひらサイズの日めくり。これぐらい小さいのだと存在感を主張し過ぎなくて使いやすいかもしれません。
カレンダーと合わせて売られているのがこちら。中国語で「通勝」または「通書」と呼んでいるあらゆる吉凶について記載されている手引書。この情報を読み解きできる人がどんどん少なくなっているので、年々需要も少なくなっていると思いますが、自営業をされている方、冠婚葬祭業、お寺など宗教施設といった所で今でも使っています。他に個人で買う方ももちろんいらっしゃいますがご高齢の方が多いですね。
通勝 ~ 結婚式の日取り選び、開業、ビジネス関連、不動産購入など大きな出来事がある時の日取り選びに使ったりします。
各日にちの内容は、その日にしてよい事、してはいけない事など。日めくりカレンダーに書いてある内容とほぼ同じですが、呪文かお経のようなものが書いてあるところもたくさんあって、文字を読むというよりはアート的感覚でめくって見るのは興味深いものの、内容は理解不能なページが大半です。
通勝、夫のお父さんが読み方が分かるので、過去に買ったものがありその中から。1年が終わったら粗末に捨ててはいけないため、今でも処分せずに我が家の本棚にとってあります。
ムスリムのお友達に教えてもらって向かったのは Joo Chiat Complex の本屋さん。彼女は毎年ここでイスラムカレンダーを買うそうです。
イスラム教に関するマレー語、アラビア語の本を主に扱っているお店。
カレンダーはお店の入口近くにあってすぐ見つかりました。カレンダーをめくって見ていると、一目でムスリムではないと分かる私に店主と思われるおじちゃんが、カレンダーの見方分かるか? など聞いてくれお喋りになりました。
イスラム教のことをもっと知りたいからイスラムのカレンダー買いに来ました、ムスリムの友達にここを紹介されて来たんですと言うと喜んでくれて。カレンダーに英語で格言が書いてあって、この言葉とてもいいですね、と言うと、コーランの言葉だよ、このコーランをあげるから持って帰って読みなさいと。ええっ? イスラム教の聖典をもらってもいいのかと思いつつ。中古だけれど英語も書いてあるから読んだらいいよと言うので、分厚いコーランを有難く頂いて帰りました。
こちらの本屋さん後で調べてみると創業 100年の歴史がある老舗の本屋さん、シンガポールに古くからあり、特にマレーコミュニティ向けに長年に渡ってイスラーム関連の書籍を提供しています。オンラインでサーチするとニュース記事などいろいろ出てきました。コーランを頂いた後 1ヶ月ぐらいして 2回目に行った時、お礼を伝えようと思って行ったらまた違う物を頂いたり。一度ゆっくり行って店主のおじちゃんにお店の歴史の話しなどもお聞きしたいと思い、また追々記事にしたいと思います。
購入した卓上カレンダー、よーく見ないとイスラムカレンダーとは分かりません。我が家、卓上カレンダーは今年こちらを使うことにしました。
右側に日々のお祈りの時間が一覧表になっています。
こちらのお店以外に同じ Joo Chiat Complex 2階のイスラム雑貨屋さんにもいくつかカレンダーがありました。
イスラムカレンダーにヒントを受けて、リトルインディアのヒンドゥー教関連の本屋さんを思い出して行ってみたところ、ありました。それもたくさん!
インド本国のヒンドゥー暦と、シンガポール向けのタミル暦、両方ありました。
こちらはインド版ヒンドゥー暦カレンダー
お店でいろいろなのがあるんだなぁと見ていたところ、ちょうどカレンダーを買いに来たご夫婦がいて、何を言っているのか分かりませんでしたがお店の人に確認をして、インド版を買って行ったので、インド版ヒンドゥー暦はシンガポールに住むインド系移住者の方に一定の需要があるのだと分かりました。
シンガポール版タミル暦はこちら。
タミル暦の日めくりカレンダー、これはリトルインディアのインド系雑貨店の壁にあるのをよく見かけます。
台紙と日めくりが別売りになっていて、好きな台紙を選ぶようになっています。ヒンドゥー教は多神教で、人それぞれ信仰する神様が違うので、こうして別売りになっているのでしょう。面白いですね。神様以外にもガンジーさん (右下)、インド系イスラム教徒の方向けメッカのデザイン (右上)、他に風景のデザインなどとにかくたくさんの種類、大きさもいろいろありました。
他に見つけて興味深かったのが、タミル暦でも先に書いたチャイニーズの通勝のような年鑑が存在すること。表紙からインド占星術に基づいて作られているのが分かります。こちらは Jothi のレジ近くに置いてありました。
お店の方にこれ何と呼びますかと聞いたら almanac と英語で答えられたので、タミル語では? と聞くと「パンジャンガム」と聞こえました。スペルが分からないので panjangam とタイプしてサーチしてみたところ同様の物が出てきました。Wikipedia では Pambu Panchangam で出ており 1883年からチェンナイの出版社が発行しているタミル暦の名称とありました。
* チャイニーズの通勝も英語だと almanac と呼んでいます。
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旧暦、イスラム暦、タミル暦ともに共通しているのは月の動きに基づいて暦がつくられていること。シンガポールは一見都市化しているように見えますが、現地の方々の日常生活は、こういった各民族独自の文化、習慣があり、それぞれの暦をもとに祭事、宗教行事などが行われています。異なる暦から見られる多文化のシンガポールがまた一層興味深く面白く見えたカレンダー探しの旅。お好きな方は新年を機会に 1つ買ってみてはいかがでしょうか。
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