中秋節シーズンによせて ~ 加熱する月餅商戦、置き去りにされる本質

旧暦 8月15日、今年の中秋節は 9月21日。お店に並ぶ月餅が華やかなシーズン。

 

この数年、華々しく売り出される月餅からだんだんと遠ざかるようになり、この時期、月餅商戦に嫌気を感じる自分がいることに何年も前から気づいてました。

 

それは、加熱する月餅商戦。クリスマス、ハロウィン、バレンタインなどと同様、行事本来の意味が置き去りにされて過度に商業化したイベントでしかなくなってきているから。

 

月餅は、いつ頃からスノースキンタイプが出てきたのか分かりませんが、伝統的なベイクドタイプに代わって、スノースキンは趣向を凝らしたものが多く、個性的な素材、高価な素材を使ったもの、シャンパントリュフなどはそういった傾向を代表するものの 1つ。シャンパントリュフが悪いと言うつもりは全くありません。

 

どこも変わり種を出してくるので、消費者の目に留まるものを売らないと生き残れないし、インパクトある物を打ち出さないといけないから、月餅自体はもちろんのこと、化粧箱の過度な装飾にも辟易してしまいます。これでもかと工夫を凝らしたゴテゴテのデザイン、綺麗だからとっておいて何かに使いたいと思っても、嵩張るから結局ゴミになって、環境にもよろしくない物ばかり。やり過ぎ感ですね。

 

中秋節は秋の満月を愛で、秋の収穫を祝い、家族団らんで一家の幸せと繁栄を喜び祝うお祭り。月餅は満月を象徴する縁起の良い食べ物として中秋節に食されます。農耕社会でなくなった今、収穫を祝う意味はなくなり、時代と共に季節行事の意味やあり方が変わるのは仕方ないとしても、商品の売り込み合戦だけ、本当はそれだけではないのだろうけど… そういった面が強調されてしまいがちで、美味しい物を食べるだけのお祭りになっていることにがっかりします。

 

ちょうど 香港の英字新聞 South China Morning Post にそのような記事が出ていたので、内容に共感しつつ興味深く読みました。

 

Meddling with mooncakes is a sign that we have forgotten the essence of the 3,000-year-old Mid-Autumn Festival. 『月餅に余計な手出しをするのは 3千年の歴史がある中秋節の本質を忘れている証拠です』と題した South China Morning Post の記事

 

記事には、香港でも伝統的なものよりもモダンなフィリングが好まれ、ビーフテンダーロイン、パルマハム、キャビアなどが入った月餅があるそうです。(記事の中に写真があります) 昔の香港はもっと素朴で、中秋節は家族との結びつきや愛を感じ、日々に感謝するもっとシンプルなお祝いでしたが、お金に追われる時代になり、伝統と本質が忘れ去られ、単なる消費型のお祭りと化しているのは寂しいことだ、といった内容が書かれています。

 

そして『 伝統は企業のマーケットシェアを拡大するために再構築されるべきではありません。伝統を守ることが目的ではなく、私たちが伝統を大切にしていくことが重要です。』という一文にとても考えさせられました。

 

これはシンガポールについても全く同じであり、中秋節に限らず他の宗教行事や季節行事でも同じことが言え、多くの国や人にも当てはまること。

 

写真は昨年の中秋節より

 

今年チャイナタウンの中秋節オープニングセレモニーはオンラインで 9月7日に行われました。なぜ 9月7日 かと言うと、旧暦 8月1日が 9月7日だったからです。ハングリーゴースト期間の旧暦 7月は、本来粛々と過ごす時期であり、シンガポールでも 10年ぐらい前までは、旧暦 7月中にデパートやホテルが月餅を売り始める事はありませんでした。8月に入るのを待って一斉に売り出すのが伝統的なあり方でした。旧暦 7月はそういう季節ではないし、お祝いをする時期ではないからです。

 

今はどこも伝統を無視して早め早めに売り始めるようになりました。みんなで渡ればこわくない的な発想でしょうか、どこも他に遅れをとるまいと、早くから売り出しを始めるのが普通になりました。伝統を守っている人のほうがバカみたいなね。

 

月餅を買うこと自体は文化だし、シャンパントリュフを楽しむのも良いと思います。美味しい物は誰だって食べたいし、変わった物を試したい気持ち誰にでもあります。そこにどんな気持ちを持って接するかなのでしょう。

 

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