オーチャードは変われるか ~ コロナでますます変わる人の流れ

この 3ヶ月程、月に数回オーチャードに行く用事がありオーチャードを歩く機会があるのですが、コロナの影響もあってオーチャード、全体的に人出も少なく寂しい感じです。オーチャードは東京で言えば銀座と多くの人がそう表現する通り、ショッピング、ダイニングで賑わうショッピングベルト。

 

しかし「シンガポールで一番のショッピングエリア」と言われてきたオーチャードもそれは以前のことになりつつあります。閑古鳥が鳴いているオーチャードの姿はとても悲しいものがありますが、このままではオーチャードには人は戻ってこないだろうと思う部分もあり、ちょっと複雑な気持ちになります。

 

 

オーチャードロードの歴史

 

Orchard は英語で果樹園の意味です。その名の通り、オーチャードロード一帯が果樹園だったことから名づけられました。1830年頃は高価で希少価値のあったスパイスの取引がさかんで、ナツメグ、コショウを始めとしたスパイスや南国特有のフルーツ農場がありました。

 

1958年 TANGS がオーチャードにオープン。今もオーチャードの交差点の角にどっしりと構える TANGS デパートは、中国から移住してきた起業家 CK Tang 氏が創設したことに由来して TANGS と名づけられた、シンガポール初、シンガポールでいちばん古いデパートです。当時オーチャードはひっそりとしていて何もなく、今と同じ TANGS デパートがある場所は華人墓地に面していて、人々はどうしてこんな所に土地を買うのだ、こんな所でビジネスをしてもうまくいかない、と口々に言いました。

 

昔も今もシンガポールの金融の中心地はラッフルズプレイス。また当時より世界各国から集まってきた駐在員とその家族が多く住んでいたのが、オーチャードに隣接するタングリン、ホランドビレッジ。タングリン、ホランドロード周辺に住んでいる住人は金融街に仕事へ行く時はオーチャードが通り道になっていました。多くの人は必ずオーチャードを通って移動する、そこに目をつけた CK Tang 氏 が TANGS をオーチャードにオープンしました。その通り、TANGS ができたことでオーチャードはショッピング地帯として賑わうようになったのです。

 

オーチャード離れが始まったのはマリーナベイができてから

 

オーチャードの黄金時代が過ぎ、時代は流れ流れて…。2010年以前までオーチャードは賑わっていましたが、転機となったのはマリーナベイができたこと。

 

マリーナエリアの開発は
2008年 シンガポールフライヤー
2010年 マリーナベイサンズ
2012年 ガーデンズバイザベイ

 

マリーナエリアで一番最初にできたシンガポールフライヤーは、オープン当時不便な所で、お客さんが集まりませんでした。今は MRTサークルラインができ、シンガポールフライヤーへは プロムナード駅から歩いて行けますが、あの辺りはサークルラインもダウンタウンラインもなかったので、その後、人の動きがマリーナベイに向くようになったのは、マリーナベイサンズのオープンに続いて、サークルライン、ダウンタウンラインと MRT が整備されたことによります。

 

マリーナエリアの開発とともに、郊外各地も次々と開発され駅隣接のショッピングモールが増え、郊外に住む住人は、ますますオーチャードを含む中心地に買い物に行ったり、遊びに行ったりすることが少なくなりました。余暇を過ごす娯楽施設などがそれだけシンガポール全域に渡って増えたということです。

 

加速するオーチャード離れ

 

前述の通り、オーチャード離れが始まったのは 2010年以降頃。特にこの5年ぐらいは年々深刻になっているところにコロナとなって、大打撃どころではないでしょう。これまで、なんとかオーチャードの賑わいを再起させようと、オーチャード商店街組合、各モールが一体となって、毎年恒例のグレートシンガポールセール、クリスマスライトアップの他、スバルチャレンジ、季節行事、ショッピングイベントなどを取り入れて取り組んでいますが、なかなか難しいのが現状。

 

シンガポール人の行動パターンを見る限り、シンガポール人はまずオーチャードには行きません。私は日本人社会との接点があるので、たまにオーチャード周辺に行く機会がありますが、用事がなければまず行かないです。待ち合わせや会う場所としても、そこに行かないといけない目的がない限り、オーチャードはあえて避けますね。先日、夫が MRT でオーチャードに行き、オーチャードに何年ぶりに行ったか分からないけど、すっかり変わっていて、駅からどこに出たらいいのか迷いそうになったと浦島太郎みたいなことを言っていましたが、こういうシンガポール人多いと思います。

 

我が家は高島屋も伊勢丹も 1年に数えるほどしか行かないですし、オーチャードではないですが明治屋も行きません。日本の食材で欲しい物は自宅に近い郊外のコールドストレージ、フェアプライスで充分揃います。別に変わっているのではなくて、これが普通のシンガポール人の家庭だと思います。

 

またシンガポール人家庭だと、郊外に住んで、家族では車で移動する家庭が多いので、駐車場が高いオーチャードは避ける傾向大。駐車場に入りやすいか、周辺道路が走りやすいかも大いに影響があり、オーチャードロードは一方通行が多く、歩道が広くて歩いて移動するには良いですが、車での移動には向いていません。

 

それに加えて一番大きいのが、オンラインショッピングへのシフト。

 

変わらなければ生き残れない

 

閉店することで話題になっているロビンソンにも立ち寄ったのですが、こりゃ閉店になるわけだ、と思ったのが第一印象。1階に入ってみて買いたいと思うものがない。ロビンソンは閉店値下げで何かあるかなと思いましたが、在庫がほとんどなくなっていることもありましたが、お客さん自体が少ない、値下げしているのに高過ぎる。これなら他のお店で見てみようと思うか、オンラインで買った方がいいと思うのが普通だと思いました。パラゴン、マンダリンギャラリーもブランド品が多く、コロナでブランド品のニーズも大きく変わったでしょうし、このままなら、パラゴン、マンダリンギャラリーだってなくなってもおかしくないと感じました。

 

老舗デパートロビンソンの閉店に当たって、労働省の Josephine Teo 大臣は「ロビンソンデパートの閉店は、企業が消費者の変化するニーズを満たすために変革を続けなければならないという強い警鐘だ。」と発言しています。アンテナ高い方はそんなこと言われなくても、とっくに分かっている事実だと思いますが… オーチャードの閑古鳥を目の当たりにして改めて痛感。

 

常に変わらなければ生き残れない… 企業をつくるのも、何をするのも結局は人。人が変わらなければ何も変わらない。今までと同じままだったら取り残されてしまう。今後のオーチャードがどうなるのか想いつつ、自分のこととしても置き換えつつ。

  

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イラスト提供 Instagram @singapolah

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