幻想と現実を独特の世界観で表現 ~ シンガポール人アーティスト Lee Kow Fong さん (1)

いつかお逢いしてみたいとずっと思っていたシンガポール人アーティスト Lee Kow Fong さん。先週お逢いする機会に恵まれ、お話を伺うことができました。

 

独特な世界観で幻想と現実を融合させ、シンガポールの日常風景をイラストで表現される Kow Fongさん。

 

■ SG55 コロナ禍での今年のナショナルデーを描いた作品
(ご本人のインスタグラムより許可を戴いて掲載しております Instagram:@kowfong)

 

なんとも言えない優しいタッチ、色使い、幻想的な世界観もありながら、親しみを感じるシンガポールの日常を描いた作品が多いです。

 

彼の作品は絵葉書、エコバッグ、ノート、クリアファイルなど様々なアイテムに描かれて販売もされています。シンガポールの東急ハンズ、ミュージアムショップ、空港のおみやげ屋さん、その他多くの場所で販売されていますので目にされたことがある方も多いと思います。

 

私はたまに絵葉書を買って、友達にお便りを出す時に使っています。

 

中学時代~プロとして絵を描くに至るまで

 

幼少の頃から絵を描くのは好きでした。中学校では MOE (教育省) が提供する芸術、創造性を育てる芸術に特化したプログラム  Art Elective Programme に選抜されました。(MOEがこの AEP を導入した初年度の1期生だったそうです) その後 Junior College (日本の高校に相当) に進み、兵役を終え (シンガポールでは高校を卒業する歳になると男性は先に兵役に行き、大学進学は兵役後になるのが一般的)、シンガポール国立大学に進み中国語文学を専攻したため、中学生以降、絵を描くことから遠ざかっていました。

 

大学卒業後も一般企業に勤め、大学で専攻した中国文学を活かし、中国語ラジオ番組向けの中国語コピーライターをしていました。その後、中国語メディアに関するコミュニケーションについて Ngee Ann Polytechnic – ポリテクニック(技術を学ぶ高等専門学校) にてフルタイムで講師として勤務していました。

 

アートとは離れた世界にいましたが、教育現場で教えているうちに、教育とアートが繋がり始めます。その頃ブログを書き始め、記事の中にイラストを描いて投稿したことがきっかけとなって、定期的にイラストを描くようになり、ブログ、facebook などオンライン上に投稿をするうちに、2007年児童向け絵本へのイラストを描く機会を得ました。小さな仕事だったけれどひとつの達成感と次への大きなきっかけを得た、と Kow Fong さん。アートへの熱はさらに増し、2009年イギリスに渡り Cambridge School of Art で1年半学び、児童書イラストの修士号を取得しました。

 

帰国後は再び教育現場へ戻るとともに、フリーランスイラストレーターとして、児童向け絵本のイラスト、幼児教育に関する書籍にイラストを描いたり、企業など商業用イラストのプロジェクトに関わっていましたが、2017年に講師業は完全に辞め、現在はイラストレーターとして活動しています。2007年、最初に絵本のイラストを描いてから、2017年にフルタイムのイラストレーターになるまで 10年かかりました。

 

イラストレーターとアーティストの違い

 

いろいろなお話をお聞きしつつ、私はシンガポールで有名なシンガポール人アーティストさんのおひとりですよね、と言うと、いえいえ私はアーティストではなくイラストレーターです。と Kow Fongさん。彼の中で 「アーティスト」「イラストレーター」 は大きく違っていて、その違いは明確。アーティストは、より自分のために作品を生み出すけれど、企業などの他者に対してイラストを提供するのがイラストレーター。私はイラストレーターだけれど、今後はアーティストを目指していきたいと話されたのがとても印象的でした。

 

シンガポールとシンガポール人の可能性

 

シンガポールは芸術分野が遅れていると言われる現実があり、確かにそういった面もありますが、シンガポール、そしてシンガポール人には大きな可能性があります。小さくてつまらない国だ、昔は (*) 5C と言われ、物質的、金銭的欲求を満たすだけの人生がすべてといった面もありましたが違います。シンガポールはあらゆる可能性を秘めた国。

 

※ 5C とはこれまで急速な経済成長のもとに発展してきたシンガポール人の物質的、金銭的欲求を満たすことを表現したもの。Cash, Car, Credit card, Condominium, Country club membership と C の頭文字をとって、勉強して良い学校に行って良い学歴を持ち、良い所で働いて安定した収入があることが良いとされる人生のこと。

 

何よりも Kow Fong さんが、時に遠回りをしたりしながらも、もともと好きだったアートの世界に辿り着き、プロのアーティストになるまで、ここまでにお話しされたことが 「可能性」 そのものであって、可能性についてそれ以上詳しくお聴きする必要はありませんでした。

 

Lee Kow Fong さん
写真は Straits Times 記事より

 

今年コロナ禍では、この状況下で想いをこめた素晴らしい作品を生み出されており、彼のシンガポールへの想い、アートへの想いをお聴きして胸が熱くなり、お話を聞きながらご本人の前で涙が出てきそうになったのですが、ぐっとこらえました。それについては後半に続けます。

 

イラストレーター Lee Kow Fongさん

ウェブサイト
facebook
Instagram @kowfong

facebook は中国語と英語で、Instagramはより若い世代向けを意識して英語中心で発信しているとのこと

 

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イラスト提供 Instagram @singapolah

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