人生の宿題 ~ シンガポールの葬儀屋さんを訪れて * 長い前置き

昨年 12月中旬、トアパヨにある葬儀屋さんを訪れました。葬儀に関する目的ではなく見学です。

 

My Community というシンガポールの歴史や文化を伝えるガイド団体主催で、深夜に葬儀屋さんを訪れるツアーに参加してのこと。

 

My Community によって 12月上旬から中旬にかけて Community Festival として、さまざまな場所を訪れるツアーが行われていました。郵便局の仕分け作業を見学するツアー、ライオンダンスをする団体を訪れるツアーなど、他にはない個性的な内容のツアーばかりで、わぁどれも行ってみたい! と思うものばかりでした。いくつか行ってみるのも良かったのですが、時間的な余裕がなかったので、20種類以上あったツアーの中から 1つだけにしようと思い、選んだのが葬儀屋さんに行くツアーでした。

 

魅力的なツアーがたくさんある中から、なぜ葬儀屋さんツアーを選んだのか、ちょっと長い前置きから。

 

シンガポールに長く住んでいるうちに、私自身どこで死にたいかを考えるようになりました。いつどこで何が起きるかは分からないけれど、シンガポールで死にたいと思うようになりました。自分が死んだらどうしてほしいか、いつ何が起きてもいいように、早くから家族に伝えておいた方がいいと考えるようになりました。

 

そもそもなぜそう考えるようになったのか。私は自分が死ぬこと以前に、実家のお墓のことで長い間悩みました。私が歳をとって歩けなくなったりしたら、いつか日本に行けなくなる日が確実にやってくる。誰もお墓参りに行かずに草ぼうぼう、荒れて無縁墓になるようならお墓なら、墓じまいしたほうがいいと思うようになりました。父が私に継いでほしかった実家のお墓があったのですが、残念ながら、でも現実的なことも考えて、私はお墓は継げないと考えるようになったのが始まり。  

  

仮に歳をとっても元気で毎年 1回 シンガポールから日本へお墓参りができたとして。1年に1回 物理的なお参りをするよりも「お墓」という場所にとらわれることなく、毎日生活している場所で、大切な人を想う方がいいのではないか。先祖を敬う気持ちが「お墓」という形ではなくても良いのではないか、そんな風に考えるようになりました。

  

私は自分のもそうですが、大切な家族に関しても、遺骨はある程度保管しておく期間があってもいいと思いますが、その後はなくてもいいと思っていて。私自身が祖父母よりも前の世代のことはほとんど何も知らないように、自分がいなくなって 3代経てば、自分を知る人などほぼ皆無になります。お墓はいつか無縁墓になって存在自体が意味のないものになるのではないかな…と思ったり。お墓や遺骨はなくても、自分のそばに大切な人の写真や想い出の品が少しだけあれば充分なのでは…そんな風に考えています。

     

いきなりこういった考えに行き着いたのではなく、とても長い年月を経てのこと。家族構成とか、日本だと地方か都市かによっても考え方や価値観は違うでしょうし。由緒ある家系の方とか、人それぞれに違う置かれた状況で考え方は違うと思います。「墓じまい」という言葉がよく使われるようになってどれぐらい経つか分かりませんが、時間とともに世の中が変わって、考え方が変わる。自分の考えが変化したのではなく、時間と共に世の中のあり方も変わった。そんな風にも感じます。

 

シンガポールでは海洋散骨は少数派ですが、選択肢のひとつとして取り入れられていて、私自身は死んだら海洋散骨にしてもらってもいいと思っている部分が少なからずあります。場所にとらわれないし、お墓の維持費も手間もかからないし。現実的すぎるかな? 笑  楽でいいと思う。    

  

とは言っても。死んで何も分からなくなった後とは言え、自分の遺骨を海に葬ってほしいと生きているうちに自分で決めるには、それは勇気とか大きな決心も必要で。決めておいた方がいいけれど、そんなにすぐに答えを出す必要もなく。これから先、時に応じて考えも変わるかもしれないし、じっくり長い時間をかけて答えを出す人生の宿題のようなもの。常に考えているわけではないけれど、頭の片隅にある宿題。そんな風に想っています。

  

だから選択肢をいろいろと見たり、知ったりしておきたい。それがシンガポールの葬儀屋さんを見たい理由でした。実際に葬儀屋さんを訪れてみて、自分で見て理解して思っていた以上に安心感を得た、実りある訪問でした。

 

シンガポール人なら自分事として考えられるでしょうけれど、日本人の方でシンガポールで葬儀屋さんのお世話になどなりたくないし、お世話になる機会などほぼあり得ませんが、誰にもいつかどこかで訪れること。見学をした葬儀屋さんは、外国人がシンガポールで死亡した場合に母国への国際搬送を行っているシンガポールでも数少ない葬儀社のひとつであったことや、丁寧で信頼を感じる葬儀社だったこと。もう少し詳しく記事にしていきます。

 

今回はちょっと長い前置きまで。次回へ続けます

 

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イラスト提供 Instagram @singapolah

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