変化の速いシンガポールで ~ 消えゆくものと残るものに対する価値観の違い

コロナになって、さまざまな事が変わった今年。物理的に中止、延期になったことや、子どもたちの学校関連にもいまだに大きく影響が出ていたり。日本にいる友人ご家族ではシンガポール駐在の予定だったのが、その話し自体なくなって残念という方もいらっしゃいました。

 

建設途中のビル、HDB、道路、MRT … 建設に携わるワーカーさん達のドミトリーでコロナが爆発的に感染したこともあって、建設関連のプロジェクトは一時的に宙に浮いたようになったものが多く、プロジェクト自体の必要性が見直されたものもありました。チャンギ空港第5ターミナルが建設延期となったのはその代表例。

 

特に変化のスピードが速いシンガポール、シンガポールの進化は止まってしまうのか? これからどうなっちゃうんだろう? と思ったことも何度もありましたが、6月19日に フェーズ 2になって早や5ヶ月。まだまだ回復途中の段階とは言え、最近のシンガポールの印象は「また進化に向かって動いている」個人的にはそんな風に感じています。

 

サーキットブレイカー中にプロジェクトを動かせなかった反動も一部あるのかもしれませんが、最近はどこへ行ってもあちこちで工事中の所が多いと感じたり、コロナ以前と同様に活発に開発しているなぁといった印象。新しいプロジェクト決定のニュースも多く見聞きします。

 

進化する街、進化する都市

 

シンガポールは成熟した都市国家ですが、すでに出来上がっている所を再開発して常に進化させています。いろいろな所へ行ってみると、ある程度年月は経過しているものの、まだまだ使える建物を取り壊して新しい建物を建てたり。国じゅう至る所でそのような新旧入れ替わりの様子を見かけます。

 

「進化」「アップグレード」に対するシンガポールのエネルギーはものすごく高いものを感じます。

 

小さな国で土地が限られているゆえ、どこへ行っても機能的に作られていて、よく計画されて国づくりがされているのを日常生活の中でも感じると思いますが、シンガポールの国づくりは大きく分けて 2種類の計画によって構成。中期的計画と長期的計画の二本柱で、時代に合わせて変わるニーズを取り入れたり、修正する仕組みになっています。

 

Master Plan
この先10年~15年の中期的計画、5年ごとに見直しをする■ Concept Plan
この先50年後までの長期的なシンガポール全体に及ぶ計画、定期的に見直しをする

 

消えゆくもの

 

進化と隣り合わせにあるのは、消えゆくもの。取り壊されてなくなるもの。自然の破壊。

 

何かが取り壊し決定になると、必ず反対の声が上がります。ここ最近で一番話題になったのは 2019年に取り壊しが決まったセントーサのマーライオン。昨年中に取り壊しが始まるとされていましたが、始まらないうちに年が明け、2020年、コロナとなり延期されていましたが、最近取り壊し作業が始まった模様。

 

国民からは保存の声と取り壊しても OK の声、両方ありました。うちの夫は取り壊しに賛成派でした。なぜならマリーナベイの本家マーラインがあれば充分、セントーサマーライオンは顔が気に入らない…(笑) 何を選択しても全員一致などあり得なく、完璧な計画などあり得ません。

 

取り壊しを決める側も、様々な背景があってのことであり、全体的な利益を考えて新たに建てるもの、できるもののメリットが多くの人にとって大きい場合、取り壊しを選択しています。特に反対の声が大きい時、それを押し殺してでも進化を進めるのはとても難しい選択であり、心も痛みます。でもそこで痛みを伴ってでも痛みをとれる選択ができるのは素晴らしいことだと感じます。

 

私がシンガポール、シンガポール人の多くの人から学んだことは、古いものに縛られない、しがらみを持たない、変わることでこそある今、常に進化する、といった進化することに対する前向きな考え方。日本的な考え方、価値観とは対照的で、日本では歴史ある建物は残す、大切にするといった傾向が強く、保守的です。

 

どっちがいい、悪いというのではなく、シンガポールの場合、お国柄もあって変化に対する許容の幅が広いのを感じ、大きな変化を受け入れ続けてきたからこそ、得てきたものも大きいと感じます。

 

残すものへの変化が見えてきた

 

これまでは経済成長優先で、古いものはばっさり、前だけを見て走ってきた感があるシンガポールですが、特にこの 5年ぐらいで、過去の歴史に対する考え方、古い物への残し方についても捉え方が変わってきたのを感じます。独立50周年で、国として半世紀が過ぎたことは 1つ大きな節目になったのでしょう。

 

今まで通り進化はしつつも、どうやったら残せるのかという視点、選択肢が広がり、残すことへの変化が現れてきました。今までは取り壊しになっても誰も声を上げなかったのでしょうけれど、ある程度の歴史ができて、保存について声を上げる人が出てきたことも影響しています。また、これまで政府の強力な意向で進めてきましたが (これまでは国民の意見が取り入れられなかった現実もあり)、国民からの多様な意見が取り入れられるようになったこと。

 

例えば建物は取り壊しても、何らかの形で歴史を残す方法をとる、新しいものにその土地のヘリテイジ要素を取り込んだデザインにする、といった工夫がされている所が多いです。

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私はもともとは日本的な考えで、ある程度年月が経って、そこに歴史が生まれたものは残してほしい考え方でした。この考え方がどこにでも当てはまるものではないと分かったのは、シンガポールで生活するようになってから。そして変化に対するシンガポール人の多くの方の考え方を理解するようになってから。いろいろな価値観があっていいのだと分かりました。

 

例えば京都のようなところであれば、景観を変えない、伝統を守る、といった文化があります。場所に応じたやり方があり、シンガポールは変化すること、進化すること、の方がよりマッチしていると言えるでしょう。

 

終わりがあるから、新たなことが始まるのを感じるのも日常的に感じることが多いシンガポール。数年建つと周辺の景色が大きく変わるのもシンガポールの特徴。前にあったものがなくなって、さみしいと感じることもありますが、常に進化するシンガポールであってほしい。フェーズ2 で徐々に動き出してから、至る所でプロジェクトが活発に動いている様子を目にすることが多いこの頃、改めてそんな風に思っています。

 

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イラスト提供 Instagram @singapolah

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