シンガポールのゴミ処理事情(2) ~ ゴミ最終処理島セマカウ島のこれから

シンガポールのごみ最終処理島セマカウ島について
(前編 セマカウ島についてはこちら)

 

ごみの焼却と焼却後の灰埋立てについて

 

シンガポールで出る一般ごみはシンガポール本島内 4ヶ所にある焼却炉で燃やして処理されます。金属は分別して取り除かれますが、それ以外のごみは焼却処理。ドイツ企業の高性能焼却炉を採用しており、超高熱処理にて無害で焼却されるため、例えば乾電池やガラスなども跡形もなく紙が燃えたように灰になります。それゆえシンガポールのごみの捨て方は何でも一緒に捨ててしまうのです。分別にかかるコスト、手間、労力はかからない、最終的にすべて灰になって臭いが出ないなどのメリットがある代わりに処理自体にかかるコストは高額になります。

 

焼却後の灰はトゥアスに集められ、トゥアスからセマカウ島まで 3時間かけてタグボートと呼ばれる船で運ばれます。灰になったごみは風に舞うと環境の害になると思われがちですが、運搬と埋立てをしやすくするため水分を含ませ灰というよりも土のような状態になって運ばれます。

 

セマカウ島の入口に倉庫のような建物があり、ここに灰が到着します。写真は2018年見学時のもの。

届いた灰を処理中。マイクロバスに乗って見学、バスの窓越しに見ることができます。

そして、そのまま どばどばーっと海中に流し込みます。
こちらの写真は Straits Times (2020年9月の記事) より

 

埋立後、汚染物質の海中流失を防ぐ防護膜について

 

土状になった灰を海中へ埋めるのですが、汚染物質が海中に流出しないようにセマカウ島の周りの堤防はすべて繊維質とプラスチックの特殊な二重構造の膜 (Membrane) で覆われ保護されています。これにより汚染水が海中に浸透することはないそうです。

 

灰が埋め立てられた後の水は浄水プラントで処理され、周辺海域へ水質汚染の影響がないよう水質は常にモニタリングされ厳しく管理されています。

 

周辺海域の生態系保護の取組について

 

埋立によって人間のごみ処理は解決しても、周辺海域の自然環境を破壊しては意味がありません。埋め立て処理によって水質汚染、大気汚染の影響がないか常に管理されており、生態系保護の取組も行われています。

 

セマカウ島の海水はバスの中から窓越しに見ても透明度が高く綺麗です。浅瀬にはウニがたくさん見えたり、珊瑚礁の保護、植林によって増えたマングローブが立派な林となっていました。人間がいない島なので、サメの種類、水鳥、水トカゲなど野生動物たちを見ることもでき、穏やかにのんびりと過ごしているように見えました。

 

セマカウ海域で養殖されているシンガポール産食用魚

 

セマカウ島海域でドイツの魚養殖業者 Kuhlbarra社が Barramundi バラマンディ というシーバスの種類の魚を養殖しています。これはごみ処理島の海域で養殖された魚でも食べて問題ないことを証明するひとつの方法です。シンガポール国内に多く流通しており、フィッシュヘッドカレー、フィッシュアンドチップス、中華料理店での魚料理など有名なレストランでも多く使われています。Cold Storage の店頭にも出ていたり、Red Mart でも Kuhlbarra で検索するとシンガポール産の魚が出てきます。

 

養殖場の様子

 

セマカウ島のこれから

 

今のペースでいくとセマカウ島は 2035年までに、ごみの出るペースがもっと早ければ 2030年以降いつ満杯になってもおかしくないと言われており、シンガポールのごみは行き場を失うことになります。

 

セマカウ島のすでに満杯になったエリアは土を盛って植林をして草原になっています。

 

この草原に何か建物を建てることができるか、第2のセントーサ島のようなものを作ってレジャー、観光向けに開発できるかなど様々なアイデアがあるようですが、活用方法についてはこれからも引き続き検討されていくものと思われます。

 

新たな資源、再生砂の開発に着手

 

このほど 2020年9月に政府から発表されたのが、焼却処理された灰を NEW Sand (再生砂) に変換して資源として有効活用ができるかどうか、技術的な可能性実現の調査を開始しました。これが実現すれば、ごみの活用によるゼロウェイスト実現、セマカウ島の寿命を延ばすこともでき、新たな雇用を生み、新たな経済システムを生み出すなど多くの可能性があります。

 

水資源のないシンガポールでは飲料水もお隣マレーシアからの輸入に頼っており、マレーシアから水を供給してもらう契約期限が 2061年、それまでになんとか自国で水を供給できるようにと開発してきたのが NEWater です。それに次ぐ NEW Sand になるのか。合わせてプラスチック廃棄物を回収し再利用する NEW Oil (石油化学事業で新たなプラスチック製品を作るための原料になるそう) の研究、開発にも着手しました。

 

独立当時、水資源の確保に困っていた頃、再生水 NEWater が実現するなんて誰も想像しなかったでしょうけれど、資源も何もないところから何かを生み出すことはシンガポールが得意とすること。夢物語で終わらせることなく、そのための人材、技術、資金を投入してそれを実行に移し実現することに関してはとても優れています。そう遠くないうちにシンガポール産の再生砂を見ることができるのでしょうか。

 

そうそう最後にひとつ。セマカウ島はごみの島ですが、ごみの臭いとは無縁で無臭、海に囲まれ気持ちのいい海風に当たり、見学者しかいない穏やかで平和な島。ごみの島のイメージとはかけ離れています。2年前に島を訪問した時のことですが、島を案内して下さるガイドさんが  ” This is not a rubbish island. ”  と言っていた言葉がとても印象的です。単にごみ処理をするだけでなく、知恵と技術を駆使して何かを生み出すといった意味で言われたのですが、まさにその実現に向けて次のステージに向かっているようです。

 

★ セマカウ島は個人で自由に訪れることはできず、環境庁へ申請を出して組織、グループなどで島を訪問することができ、決められたルートを見学できます。島は環境庁に認定されたガイドさんだけが案内をすることができ、シンガポール観光局公認ガイドでもあります。2020年コロナになってからは島の見学ツアーは全面的に中止、再開が期待されています。コロナの状況が回復すれば、セマカウ島とごみ焼却場の見学も徐々に再開すると思います。今年はもう無理そうですが、状況が落ち着き次第、来年は見学ツアーを再度企画したいと思っています。

 

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イラスト提供 Instagram @singapolah

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