シンガポールの国策としての緑化について触れましたが、緑化推進と共にいつもある大きな課題の 1つが破壊か保存か。もう1つは野生動物との共存社会をどうやってつくるか。
シンガポールの場合、国として生き残るために便利で機能的になる選択をとらざるを得ず。高速道路や建物を建設するとなれば木を切って森林を縮小する作業が必要になり、自然破壊、野生動物が暮らすスペースを狭めることになります。開発は進めるものの、できる限り野生動物との共存にも取り組んでいます。それでも自然破壊だ、もう新しい建物も道路も必要ないと反対する人が一定数いるのは仕方のないことでしょう。
BKE ブキティマ高速道路は、1980年代後半に両側にあった自然保護区を切断するような形で建設された高速道路。そのため森から森へ移動する動物たちの自然道が断ち切られてしまったのです。高速道路を横断する動物が増え、動物と車との交通事故が増えたことにより、動物のためにつくられた横断歩道が Eco-Link@BKE (2013年完成)
画像は国立公園局による Eco-Link@BKE についてのページより
国立公園局と自然保護団体の協力により、動物の生態を確認できるモニターカメラなどを設置し、動物のための横断橋がどのぐらい役に立っているのかといった調査も行われています。2013年完成 Eco-Link@BKE が機能していることを確認し、2019年には 2例目となる Mandai Wildlife Bridge も建設されました。
コロナで街が静まって、多くの野生動物が街中に出てきたことがたくさんニュースになりました。人間の活動がずいぶん戻ってきた今でも、そういったニュースは引き続き多く、コロナはあくまでもきっかけに過ぎなかったように感じます。人間が安易に餌を与えたり、散らかったゴミから食糧を得て、動物が楽に食べ物を得る方法を習得することによって、動物が人間の生活スペースに出てくるようになったのは大きな理由の 1つ。自然破壊により人間と動物の生活スペースが近くなっていることもそうです。
人間が食べる食べ物は自然界の食べ物よりもカロリーが高く、動物にとっては苦労して自然界から食べ物を得るよりも、人間が持っている物を襲ったほうが楽。その行動を繰り返すことによって野生動物は楽することを学習し、美味しい味を覚えて、人間がいる所には食べ物があると刷り込まれ、人間を襲ったり、動物が人間の生活スペースに入ってくるのです。野生動物に餌を与えない責任を持つことも重要。また専門家は、野生動物に遭遇した時の人間への対応方法など教育が必要だと訴えています。
11月に相次いだのが、住民が公園で野生のイノシシに襲われた例。痛々しい画像ですがシェアします。
* Straits Times ニュース記事より
これはパシリスの公園で起きたのですが、他にもイノシシに食べ物を獲られるケースなどはシンガポール各地で報告されていて、人間が野生動物にどう対応したら良いかが課題となっています。パシリスでのこの事件の後、パシリス地区の住民に送られた野生動物にどう対応するかのアンケートが知人を通して私にもたまたま届きました。内容を見たところ
1) 何もせずこれまで通り野放しで良い
2) そのままで良いが、何らかの対策は必要
3) 動物の駆除または別の場所への移動が必要
の 3つの選択肢から野生のニワトリ、犬、イノシシ、その他の野生動物と動物別に回答するようになっていました。
解答結果は以下の通り。パシリス地区の国会議員さんがソーシャルメディアでシェアしていた情報によります。
この調査結果をどう見るかは、なかなか難しいところ…。大人はともかく、小さなお子さんが外で遊ぶには危険となることもありますし、どんな人の意見も取り入れつつ、バランス良い対応をどうとるかは本当に難しいと思います。
シンガポールでよく見られる野生動物たち。散歩の途中など身近に遭遇する動物がほとんどで、多くの方が目にしたことがあると思います。
■ バナナリス
■ ビロードカワウソ
■ ミズオオトカゲ
■ マレーヒヨケザル、ブキティマ自然保護区では割と頻繁に見られます
■ マレーウオミミズク、つい最近遭遇。野生のフクロウを見たのは初めてでした。何というフクロウが名前が分からなかったので鳥に詳しいお友達に教えてもらいました。
大都会と自然が共存するシンガポール。どうしても人間優先になりがちで難しい課題ではありますが、野生動物ができる限り自然に近い形で共存できるスペースを保てる、人にも動物にも優しい理想的な緑化推進が今後も課題となります。
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イラスト提供 Instagram @singapolah