国民の生活基盤となる住宅 HDB、シンガポール国民の約8割が HDB に住んでいます。その8割のうちの9割が HDB は自分の持ち家で、持ち家率は世界でもトップ3に入ります。ご参考までに、世界の持ち家率 1位はルーマニア、上位にはスロヴァキア、リトアニア、クロアチアなど東欧諸国が並ぶ中、ぽつっと 2、3番手に位置しているのがシンガポール。
シンガポールのコンドミニアムも独特なデザインが多いですが、コンドは民間住宅なので、特にハイエンドのコンドは開発業者が資金をかければ、目を引くようなデザインができるのは当たり前。HDB は政府が手掛ける国民のための住宅、できるだけ安価に限られた予算内で、機能的につくられています。(安価と言っても近年、特にリーマンショック以降のこの10数年、HDBの不動産価格も値上がりしていて、社会問題のひとつとなっています。)
HDB のことを日本語では公団と表現していることが多いです。公団で間違っていなく、日本の団地の要素も強いのですが、特に近年の新しい HDB は公団、団地のイメージとはかけ離れています。マンションに近い要素もありますが、マンションもいまひとつしっくりこなく。HDB を表現するのに何かぴったり来る日本語がないものかといつも思うのですが、きっと HDB という言葉そのものが、一番しっくりくるのかもしれません。
HDB そのものがシンガポールの日常を象徴していて、今の10セント硬貨には HDBがデザインされています。現在の紙幣に HDB がデザインされているものはありませんが、以前流通していた紙幣には HDB がデザインされているものがあります。
近年の新しい HDBはデザインはモダンですが、無駄を省いた合理的、画一的なデザインが多く、個性的という視点ではちょっとつまらないものが多いです。古い HDBは試行錯誤の時代にいろいろなデザインに挑戦したことが分かったり、国民の年齢層が若かったこと、急速に経済成長した時代につくられたことが伺え興味深いデザインが多いです。
HDB 建物そのものがユニークなものをいくつかピックアップ、どれも築年数の古い HDBばかりです。
Blk 259 Ang Mo Kio Ave 2
1981年完成、築39年
四葉のクローバーをイメージして作られた、シンガポールでここだけ、全面曲線で角のない HDB。このブロックだけぽつんとあり、1フロアに4ユニット、各ユニットも広めに作られており、古いコンドミニアムのようです。
1970年代に画一的な HDBのデザインを変えようという目的で、他の HDBよりもコストをかけて作られた四葉のクローバーデザイン。販売価格も他の HDBより高めで当時の販売価格帯 $110K。個性的でいいデザインだという声、予算をかける意味がないといった声、また角のない住宅はフィットする家具がなく実用的でない面も多く、称賛と批判の両方の声がありました。アンモキオのマーライオンに近いです。
Blk 34 Whampoa West
1972年完成、築48年
C の字のような弓形をした HDBブロック。ここの通路はシンガポールでいちばん長い共用廊下があり、その長さ 320m。ブロックが大き過ぎて普通に写真を撮っても入り切らないです。
このブロックは 今年の HDB (住宅開発庁) 設立 60周年記念で、つい先頃、切手のデザインにもなりました。一緒に発行されたマリーナベイの景色の切手は、シンガポールでいちばん横長 16.3cm の切手となりました。今月発行されたばかりの切手なので、欲しい方は今ならお近くの郵便局で買えます。
Blk 142 Potong Pasir Ave 3
1984年完成、築36年
三角屋根の HDBと言えば Potong Pasir
この地域の象徴ともなっており、Potong Pasir 駅を降りると、三角屋根のブロックが入ったこの地域の風景が駅通路の壁にデザインされています。私は巨大な三角定規みたい!と思いました。
Blk 34 Upper Cross Street
1975年完成、築45年
チャイナタウンには個性的な古い建物が多いですが、HDBならここ。駅からも近く、ご存じの方も多いと思います。緩いカーブのある道路に沿って建物も曲線を描き、壁一面に描かれている月、星、太陽と雲のデザインがかわいいです。
いろいろなデザインの HDB、地域色を感じたり、デザインからさまざまな表情を感じ、シンガポールの日常を垣間見ることができます。まだまだ個性的な HDB たくさんあるのでまた追って。
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イラスト提供 Instagram @singapolah