シンガポール人視点で見る外国人へのビザ取得基準引き上げについて

外国人へのビザ取得基準引き上げについてのニュース。

 

今回のビザ取得に関する給与引き上げ要件
・ EP   $3,900 ⇒ $4,500 (2020年9月1日から)
・ EP金融 $3,900 ⇒ $5,000 (2020年12月から)
・ Sパス $2,400 ⇒ $2,500 (2020年10月1日から)

 

Straits Times ニュース記事

日経新聞ニュース記事 (日本語)

 

在星日本人、これからも引き続きシンガポールでビジネスを継続していくであろう日系企業、関連の方々には非常に厳しいニュースではありますが、結論から言うと、シンガポール政府としては当然の政策と言えます。

 

シンガポールの人口は 570万人
ざっくりで
シンガポール人 6割
PRを含む外国人 4割

 

シンガポールにおける外国人の割合については、外国人移住者を増やしてきた 2000年代に入ってからずっと課題となっていることであり、その影響でシンガポール国民が優遇されていない、と国民が不満を持つ構図はコロナ以前からずっとあったこと。7月の選挙結果の影響もあり、コロナで景気後退し、シンガポール人の失業率が上がっている中、このような政策をとるのは普通のことです。

 

ただし、この政策自体が有効で、これを行うことでシンガポール国民の雇用率が上がるのかどうかと言えば、それについては大きな疑問があり、外国人と共存しつつ国民を優遇する方法は他にやり方があると感じ、違和感を感じないわけではありません。外国人締め出しとも受け取れるこのような政策は分かりやすいのでやっている、そういう面も大いにあるでしょう。

 

ちょうど、このニュースについて触れようと、どんな風に書こうかなぁ思っていたところ、シンガポール人の友人からメッセージがありました。彼は今春大学を卒業したばかりで現在就職活動中。今仕事を探しているんだけれど、仕事を探すのがこんなに大変だと思わなかったという内容のメッセージを受け取り、ちょうど考えていた事とあまりにもリンクしていてびっくり。彼は卒業後、とある企業で仕事をしていたので、まさか就職活動中だとは知らなかったのですが、一時的なお仕事だったと知り、腰を据えて働ける場所を探して就職活動中とのこと。私はこのニュースについて話題を振ってみました。

 

私  :  外国人のビザ取得基準が上がることについてどう思う?

 

彼の意見 :

僕の外国人の友人は EP を取得することはとても難しいと、コロナ以前から、そして今回のビザ取得基準引き上げ以前からそう言っていました。それを更に引き上げるという政府の決定は、おそらくコロナに起因するシンガポール国民の失業を埋め合わせするための手段だと思います。外国人にとっては、とても大変なことだろうと感じます。

 

1) シンガポールはすでに多くの外国人スペシャリストを多様な労働力として抱えていて、今このようなコロナの影響を大きく受けている状況で、外国人の数を増やす必要はないと多くの国民がそう思っていると思います。

2) 逆に(シンガポールで働く)外国人スペシャリストとは違って、多くのシンガポール人は他の国で仕事を見つけることができません。

 

だから政府が国民を保護する政策をとるのは当然。ただし、これは短期的な解決策にしか過ぎなく、長期的な解決策のひとつは 例えば政府が始めた SG Traineeships プログラム。うまくいけば、シンガポール人は外国人と共存しながら コロナの不景気を乗り越えることができると思います。

 

結論を言うと、シンガポール人が(シンガポール人の就業機会を奪っているという点で)外国人を憎んでいるとは思わないし、シンガポール人は競争も嫌いではないと思う。でも自分たちの国で外国人がより良い境遇にいるのを見るのはおもしろくないよね。それは日本で外国人が日本人よりも専門的な仕事をして、より良いお給料をもらって、より良い生活をしているのを見たら、同じように思うのではないかな。人間の本能だと思う。

 

SG Traineeships プログラムとは彼に聞いて初めて知ったのですが、2019年、2020年の高卒、大卒で仕事を探している新卒者向けに報酬を受けながら研修生として企業での研修機会を得て就業経験を得る政府によるプログラム。 また新卒者だけでなくスキルアップや、新たな業種への就業機会の幅を広げるため40歳以上の国民、PRも歓迎との事。

 

私 :ほんとうにそうだねぇ…。人はみんな自分の利益しか見ていないからね。

彼 : 僕が逆の立場でも同じだと思う。

私 : そうだね、あなたも私も、みんな同じだと思う。

 

ここまで話してから、この部分ブログにシェアさせてもらってもいい? と聞くと、ちゃんと書き直すからちょっと待って!と丁寧に書き直してくれました。笑 (丁寧に打ち直してくれただけで、最初に話した内容とほぼ変わりはありません)いろいろと話をした中のごく一部です。

 

夫とも話をしましたが、ほぼ同様の意見。夫はこのビザ取得基準引き上げに関わらず、日頃からシンガポールには外国人が必要。でもシンガポール人は国民としてもっと優遇されるべき、政府は外国人を優遇し過ぎていて、シンガポール国民を優遇する政策をもっと導入してほしいとの考えを持っています。私の周りの身近なシンガポール人の多くはそのような考えです。その結果が先の総選挙にも大きく表れており、分かりやすいです。

 

シンガポール人は、国のあり方から多様な環境にとても慣れていて、外国人を敬遠することなく歓迎してくれる人たち。ただし具体的に日常生活の中で仕事事情であったり、住宅事情、教育事情などで外国人が自国民よりも優遇されているのを見たり、感じたりするのはおもしろくないってことです。結局これ、シンガポール人だけでなくどこの国へ行っても同じことだと思うのです。シンガポールの場合、国の規模が小さく、人口も少なく、4割の住民が外国人という状況下で、外国人が優遇されているというのを顕著に感じやすい状況にあると思います。

 

シンガポール人の肩を持つわけではないですが、外国人には分からない、知らない様々な事情があったり。日頃からシンガポールの人と身近に接し、話をするなかで、彼らがどうしてそのように考えたり、感じたりするのか、きちんと聞くと、彼らには彼らの視点、言い分があり、単に不満を言っているだけでないと分かります。

 

日本人を含め多くの外国人が主張する、シンガポールで会社やってるのに、税金おさめてるのに。これはシンガポールに外国人として仕事をしに来ている以上当たり前のことであり、そこを主張することにまったく意味がなく、それプラス付加価値のある存在でなければ、シンガポールにとっては、景気がいい時には歓迎しますが、景気が悪くなったら不要になるただの調整的な存在。シンガポールにとって『人財』になるのか 『人材』になるのかの分かれ道ではないでしょうか。

 

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イラスト提供 Instagram @singapolah

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