シンガポールの教育について ~ これからの未来とその理想と現実と

前回書きました 『PSLE シンガポール小学校卒業試験は人生のすべてを決めるものではない』の延長線で、シンガポールの教育について、未来とその理想と現実。

 

頭で分かってはいるけど変われない現実

 

「PSLE は人生のすべてを決めるものではない」と考えている親は割と多いです。これが全てではないと分かっていても、通過点として避けられないから、そこに向かってエネルギーを投入する現実があり、やらざるを得ない現実があり、できる限りのことをやって少しでも成績がいい方がいいと考えるのは普通のことだと思います。

 

頭では分かっていても、そうではない現実。

 

そして安易に PSLE をなくせばいいものかと問えばそうでもないとも思います。

 

シンガポールは政府が教育に力を注ぐ国

 

シンガポールは政府が教育に力を注ぐ国。資源のないシンガポールは人こそが資源となり、人材 ではなく 人財 となることが重要とされ、小国が世界で生き残るために、少ないシンガポール人 (シンガポール国籍の人口は 約350万人) の中から学力に秀でた人を一定数生み出し続けなければならない側面があります。それゆえシンガポール独立後、国が教育に力を入れた結果、国の経済発展とともに人々の学力、学歴も急激に伸びました。

  

厳しい教育制度でエリートを育てるやり方は、独立後半世紀経って不要になった面もありますが、その恩恵を感じたり、勉強で一定の時期にある程度頑張ることが必要だと考える人がたくさんいるのも事実、逆に厳しい教育システムについていけずに歪みとなって表れている面も大きくあります。

      

政府は学歴重視に傾き過ぎた教育を少しずつ緩めるやり方に変えていますが、教育改革と言うにはまだまだ。PSLE の採点システムはこれまで偏差値のような独自採点方法があり、1点1点を重視するシステムから、幅を持たせた採点システムに今年から変わりました。この数年で低学年への試験廃止や宿題を減らすなども導入していますが、それが教育熱にブレーキをかけるものになっているかどうかは疑問です。

 

また、政府は勉強のストレスを減らすことはあっても PSLE を (今のところ) なくす方針はないとしており、政府もそうですが、多くの親も、単にゆとり教育のようなものにすれば良いわけではなく、ある程度の競争は必要だと考えていることが分かります。

 

アジア人的価値観と華人的価値観

 

そもそも欧米の方が日々の生活や人生そのものを自由に過ごす文化や価値観とアジア人は対照的。文化、価値観、人生観のような大きなところが変わらないと、教育だけを切り取って変えても、働き方や生き方の価値観が変わっていなければ変わりようがないのではと感じる面もあります。もちろん一部が大きなところに及ぼす影響、大きなものが一部に及ぼす影響の相互作用で、教育も全体も互いに変化を繰り返しながら。

  

もう 1つはシンガポールの人口 75% を占める華人的価値観。多民族国家のシンガポールですが、多数派の華人色が様々な面に出やすいのも特徴で、それは教育にも強く現れています。日本人以上に教育熱が高い華人の方々。それはシンガポール華人だけでなく PISA (国際学習到達度調査、子供の学習度を計る国別ランキング) の結果を見れば中国、香港、マカオ、シンガポール、台湾と中華圏の国が上位を占めていることからも分かります。中華系の方は競争に強く、競うことでよい効果を生み出す面も多いのです。(それがあまりにも過激になると、社会問題や歪みとなるのですが。)

           

これからの未来

 

情報が溢れる時代になって、私たちはあまりにも知識だけを得過ぎて、何でも知っているような気がしますが、大切なことはどんどん置き去りにされている気がします。感情の扱い方、例えば他者への思いやり、自分自身の感情のコントロールについて。あり方や生き方。コロナでも一層注目されるようになったレジリエンス、困難に対応する力やスキル…勉強では学べないことがたくさんあります。

 

コロナで生活が激変したように、教育も人も、私たちはもっともっと思い切って激変、大改革していいのだと思います。

 

競争がいいと言う人もいるでしょう、ゆとりがいいと言う人もいるでしょう。何がいちばん良いかなど誰にも分からないし、やってみないと分からないから、より良い教育が何なのかを問い続け、やり続けることなのかと。シンガポールは、いい事はやってみる行動力と、時代に素早く対応する、変わることへの潜在能力は持っています。

 

今、与えられ、置かれた環境でベストをつくしつつ。

 

↓  シンガポールのイラストをクリックで応援お願いします!

にほんブログ村 海外生活ブログ シンガポール情報へ
にほんブログ村

 

右上角の赤いメニューから、読者登録ページで Email アドレスを入れて頂くと、ワードプレスのシステムより記事が更新された時に、お知らせが届きます。アメブロの読者登録機能と同じです。どうぞご利用ください。