先週はシンガポール世間をちょっと驚かせた大きなニュースが 2つあった。
1つめのニュースは 6月5日月曜日、シンガポール政府はクランジ競馬場閉鎖の決定を発表した。この競馬場閉鎖決定のニュースについて、ここで書こうかどうしようかと思っているうちに、次の大ニュースが入ってきた。6月8日水曜日、上級大臣のターマン氏が次期大統領選に立候補するとのニュースが駆け巡る。どちらも驚きのニュースだったものの、国民の日常生活に直結すると言えば、競馬場閉鎖よりもターマン氏大統領立候補のニュースの方がはるかにインパクトも、国民の関心も大きい。私の中でも、競馬場閉鎖のニュースは一気に消えてしまった感があった。
どちらのニュースとも数日間日々アップデートされていく行方を見ながら見守っていたけれど、どちらも大きなニュースだったので、やはり両方とも触れてみたいと思う。
まずは 6月5日に発表されたクランジ競馬場閉鎖決定のニュースから。
2027年閉鎖と発表されたが、2027年3月までに競馬場の土地を国に返還しなければならず、2024年10月に最終を飾るグランドレースが行われ、実質 2024年の閉鎖となる。あと 1年半。これは単に競馬場がなくなるだけでなく、シンガポールから競馬そのものがなくなる。植民地時代に始まった 180年の競馬の歴史が幕を閉じることになる。なんとまぁ思い切った決断をしたものだ。
この発表を知って私も当初は驚いたものの、次々と出てくるニュース記事などをいくつか読んでみたり、閉鎖の決断に至った政府発表やその背景を見て、そして総合的な視点で考えてみると、閉鎖の決定をしたことで良いのではないかと思えた。
そう This is Singapore. これがシンガポール。これこそがシンガポール。この普通ではあり得ない決断を下して、実行する、これがシンガポールのある意味強み。もちろんいいことばかりではないし、多くの人々から批判や反感も買うに決まってる。競馬場を閉鎖するには、競馬場で働くスタッフ、調教師、競走馬… 全ての人が職を失い、行き場を失くすことでもあり、生活を失うことにも直結する。普通に考えればひどい決断であり、ひどい話しだよ。
それでも。私は閉鎖の決断に至った政府発表を読んで、インタビュー動画を見て、閉鎖の決断に至ったシンガポール政府はすごいと思った。閉鎖の理由は、ウッドランド国境チェックポイントを含む周辺地域の再開発、住宅、レジャーその他の開発のため。そして過去数年、競馬の観客が減少し続けていることなどを挙げていた。
閉鎖に至った決断を語る政府インタビューの中で、私がいちばん気になったキーワードは “future 未来” と “next gereraions 次世代“ クランジ競馬場はガーデンズバイザベイと同じ広さの巨大な敷地、そこに競馬場がこの先も存在し続けることと、より多くの人々に意義ある土地の使い方を考えて、未来と次世代のためにどうしたらよいか? と考えたならば、競馬場閉鎖の決断を下しても致し方ないと思えた。すでに現実社会で起きている少子化、高齢化に加えて、これからの未来を考えたならば、競馬場があることで社会に果たせる役割と、それ以外の何かがあることで果たせる役割は、天秤にかけなくても簡単に分かるだろう。
シンガポール競馬会理事長のインタビューでも、政府に説得された面もきっとあるのだろうけれど、より多くの人へ有意義な土地の利用を考えたならば、競馬場のスタッフ皆さんも閉鎖に着いて理解してもらえるはずだと政府決断を支持する発言していた。その発言がちょっと痛々しくも見えたけれど…。
競馬場閉鎖が決していいこととは思わないけれど、国土が限られた小さな国だからこそ、何が必要で、何が必要でないのかを真剣に考える必要があり、必要なものに優先順位をつける。土地に余裕があれば考えなくてもいいようなことを考える機会を与えられたり、普通ではあり得ないアイデアを考え出せること、こういう状況に置かれなければ絶対に出てくることはない。これは逆に考えれば、シンガポールに与えられた利点、力なのだと思う。
競馬場閉鎖の決定に多くの批判、反対している方々がいる一方で、多くのシンガポール人は知っている、シンガポールに永遠に存在し続けるものなどないことを。This is Singapore.
■ Straits Times ニュース記事 2023年6月5日
S’pore Turf Club to close Kranji racecourse by March 2027 to make way for housing, other uses
タイトルのサムネイル画像はシンガポール競馬会の facebook ページより使わせて頂きました。
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