より多様な社会の実現 ~ 同性愛禁止する法律を撤廃する政府発表後の動き

先日行われた建国記念首相演説で 8つの項目について発表されました。(* その時に書いた記事はこちら) その後、首相演説で発表された内容の中でも 377A に関する件に様々な反応、動きが見られました。377A とは男性同志の性行為を禁止する刑法 377条A項 を撤廃することを発表したものですが、単にその法律を撤廃するものではなく、社会的に幅広い影響があり、今まで以上にインクルーシヴな社会、国家を実現するための、シンガポールの方向性を意味づけるものです。

 

377A 撤廃の発表後、様々な組織、団体が公式声明を発表し、その中でも各宗教組織からの発表内容はどれも愛あるもので、異なる宗教が共存するシンガポールらしさが際立っています。

 

こちらの mothership 記事によると、宗教団体、社会的支援団体、LGBTQ 関連組織など 34以上の組織、団体が組織としての声明を発表したとあります。画像をクリックで mothership オリジナル記事に飛びます。

 

仏教組織、イスラム教組織、キリスト教組織から 1つずつ、どんな内容が発表されているのか、その一部をご紹介したいと思います。★ 全文全て訳すと長過ぎること、詳細に理解するよりも、シンプルに分かりやすい方が理解しやすいと思うので、ところどころあえて省略しています。この件に関してご関心のある方は、リンクを張っていますので原文をご覧ください。  

 

仏教 : Buddhist Fellowship

 

 

ブッダの教えは、あらゆる生きとし生けるものへの共感と慈悲です。その教えは、性別、人種、宗教、言語、性的指向に関わらず、すべての人々について理解し、配慮することに努めることです。この教えに従い、私たちは 2018年にあらゆる差別的法律の撤廃を支持する声明を発表しました。

 

377A の撤廃は、今後より平等で調和のとれたシンガポールを構築するための道しるべとなります。

 

LGBTQ+のシンガポール人の方々へ

 

同じシンガポール人として、友人として、家族として、あなたとあなたの愛する人たちへ親愛の心を捧げます。私たちは、シンガポールがより良いインクルーシヴな社会として成長するために、平和で理解ある調和のとれた道を進むことを心から願っています。

 

限りない広い心で生きとし生けるものを慈しむのです。- Metta Sutta(仏教の経典)

 

イスラム教 : MUIS イスラム教評議会

 

 

* 全文が長いので印象に残った部分、ポイントになる部分だけを意訳しました。

イスラム教では、社会の基本的な基盤として、男女の結婚により家庭がつくられることを重視しています。イスラム法によって定められた結婚とその性的関係は、人類が地球上で子孫を残し繁栄するために神が選んだ道の一部であり、イスラームはそれ以外のあらゆる形態の性的関係や結合を禁じています。私たちの信仰による教えは、知恵と思いやりによって、私たちを正しい道へと導いてくれます。

 

中略

 

私たちの主な関心事は、法律そのものではなく、法律が社会に与える影響と社会が大切にしているものです。神の恵みと祝福により、インクルーシヴな社会があってこそ、宗教と共に生きる日々を実践することができ、そのことによって、私たちは多くの複雑な社会的、宗教的問題に対処するための正しいバランスを見つけることができるのです。

 

家族制度を強化することは、地域社会として、国家として、共に歩まなければならない道です。アッラーの御加護がありますように。

 

キリスト教 : 教会連合APCCS – The Alliance of Pentecostal & Charismatic Churches of Singapore Buddhist Fellowship

 

APCCS 80以上の教会が参加している教会連合組織による声明
画像をクリックで APCCS 教会連合が発表したオリジナル記事に飛びます。

 

* 全文が長いので印象に残った部分、ポイントになる部分だけを意訳しました。

 

APCCS は 80以上の教会を代表して、政府が刑法 377A を撤廃するという決定に失望の意を表明する一方で、結婚の定義を保障するための法改正の動きについて歓迎の意を表明します。

 

中略

 

「今回の撤廃決定は、子どもたちや次世代の人々の文化に大きな影響を与える極めて遺憾な決定です。しかし、私たちは、政府がこの問題に関して、様々な異なる見解の間でバランスを取ろうとしていることも認識しています。」と、APCCS 会長 Yang Tuck Yoong 牧師は述べています。

 

中略

 

377A の撤廃は、すでに性的に複雑化した世界に、さらに新たな層を付け加え、より道徳的複雑さを助長するものです。そのような世界に対応するには、肉体的、精神的に高く成熟した考えが必要であり、未熟な子供たちを時期尚早にさらしてしまうことになり兼ねません。

 

APCCS は、より広い視野で、当連合の牧師はセクシュアリティに関する問題だけでなく、結婚、家族、精神的な健康と、皆さまが信仰に導かれた日常生活を送れるように配慮し、引き続き支援をしていきます。

   

他にももっとご紹介したいのですが、ボリュームがあるので少しだけにしておきます。ごく一部の内容ですが、これらの声明のひとつひとつにシンガポールのあり方を象徴するものが凝縮されています。シンガポールではどんな宗教をも侮辱したりするような言動、行動は厳しく罰せられる他、キリスト教の牧師さん、仏教の僧侶、イスラム教のイマーム、ヒンドゥー教のグルといった各宗教指導者は、異なる民族や宗教が互いを尊重し、敬愛し合い、共存して暮らせるように特別な指導を受けており、自分たちの宗教こそが最高の教えである(= 他の宗教は間違っている) といったような発言もすることはできません。

 

異質なものがひとつになろうとする姿はなんと優しく美しいのでしょう。

 

あらゆる違いが共存する社会。言葉で言うのは簡単だけれど、実践してさらに継続するのはすごく難しいこと。シンガポールは世界の見本となって、これまでもやってきたように、これからも、それが可能であることを示し続けてほしいなと思います。

 


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