私がシンガポールを批判しない理由 – この内容で 2019年4月に想いを綴ったことがあるのですが、それから 1年ちょっとを経て、さらに思っていることが深化していること、旧ブログからの移行も兼ねて、改めて記事にします。
私がシンガポールを批判しない理由で、大きく影響を受けているのが軍での経験です。
シンガポール軍ボランティア部隊は 2015年2月に発足し、私はその一期生に応募しました。入隊した時は、こんなにも影響を受けることになるとは想像すらしていませんでしたが、それ以来、人生観、自分の世界観を変えるほどの大きな出来事になっています。
入隊すると全員が受ける BMT – Basic Military Training 軍事基礎訓練の2週間で大きく影響を受けました。この6月で入隊してちょうど丸5年。任期10年なので、ここから折り返しの5年に入ります。
■ 軍で学んだことは軍事ではなく、人間の本質だった
軍隊に入ると、「軍人または兵士 – soldier」であるとはどういう事かを学び、兵士になる訓練をします。その多くは体力的な訓練で、有事になったらどうやって戦うか、具体的な戦術、技術、武器の使いかたです。
軍隊は基本的に集団行動です。1人では何もできません。どんなに優れた戦術、技術、武器があっても、仲間との信頼、協力がなければ機能しないことばかりです。表面的には戦うことを学んでいるようですが、その奥ではどうやったら仲間と1つになれるかを考えて、実践することでした。
戦うこと以上に学んだことは、「人はどうしたら戦わなくて良いのか?」ということ。戦わないためには、どうやって他者を理解し、レスペクトするのか? これは仲間とどうやったら1つになれるかにも共通しています。仲間どうしが心を共にして 1つにならないと敵には立ち向かえないからです。
そして、戦わなくても良いとは、平和がどんなに貴く、平和が当たり前ではないことを学び、そのためにはどうしたら良いのか? それを考えるのに兵士である必要はなく、たまたま深く学んだ場所ときっかけが軍隊であっただけで、人としてどうありたいか? を考える人間の本質的な学びでした。
■ 実践してこそ真の価値があること
軍での学びはほとんどが身体を通しての学びです。知識として頭で理解しているのと体験として身体が理解しているのでは、大きな違いがあります。実践しなければ何も意味がなく、全てが実践の場所であり、実践する機会でした。その様々な実践は、軍隊の中だけで実践するのは更に意味のないことで、制服を着ていない時でも、一般人として、社会の一員として、私達はいつも日常でどうしたらよいのか? どうありたいのか? を強烈に考える経験となりました。
ボランティア部隊はシンガポール軍の中でも特殊な部隊で、最も多様性がある部隊です。国籍も違う人、学生から社会人と年齢に幅があり、職業や文化的バックグラウンドも様々な多様な人の集まり。考え方も言葉も違う集団の中で、何かを共にやり遂げる経験は、それまでにない経験したことのないことばかりで、考え方や視点が大きく変わりました。
■ 真のリーダーとの出逢い
部隊が発足した時に就任された私達の最高指揮官は、今でも legend 伝説的人物と呼ばれ、部隊を率いるリーダーとして その行動、言葉、あり方、全てがお手本となる方でした。自らが率先して行動し、模範となり、言葉だけでなく言葉と行動が伴うことを実践して見せ、時に厳しく、時に優しく、いつも私達を励ましてくれました。
Lead by example. 私が模範としてしめすから、君たちも常に良い模範となりなさい、よくそう言われました。
最高指揮官をアシストする上長も、実践が全て、実践のかたまりのような方でした。上長は 1991年 SQハイジャック事件で機内に突入した特殊部隊のメンバーのうちの 1人です。
* ハイジャック事件を再現した youtube があるので、お時間ある方どうぞご覧ください。(約25分)
お2人は、軍の中でも一番厳しい奇襲部隊の出身で、その訓練は想像を絶するものです。身体的なタフさ以上に、精神的なタフさを求められます。タフであるというのは、身体的、体力的タフさだけではなく、人間的にタフであること。身体能力の限界を超える厳しい訓練で、身体も心もストレスが極限になった状態で、冷静でいられる訓練をした人にしかないであろう、厳しさの中にある人間的な強さと優しさを特にこのお2人から学びました。
■ ネガティブ – 否定、批判、攻撃から進化や変化はないことを学んだ
ボランティア部隊の訓練は、兵役男性やお仕事で軍に従事されている方の軍事訓練とは比べ物にならないぐらい軽度なものですが、何の経験もない一般人が軍事訓練に入るのは簡単ではなく、体力的にも精神的にも厳しいものでした。
仲間と励まし合ったり、皆で頑張ろうというポジティブな空気を作り上げなければ、到底乗り越えられるものではありません。訓練が日常の中では、怒りがあったり、仲間同士が対立して攻撃的な気持ちが高まったり、辛くて泣いたり、心が折れること、投げ出したくなること、当たり前にあります。
そんな時、どうやって自分を励ますか、他者を励まして共に進むか、否定や批判、攻撃をしても望む結果は得られないこと。それを実践して見せてくれたのが部隊の指揮官でした。
毎年2月、部隊発足記念日に皆で集まるイベントがあります。この写真は2019年のもの。今年はコロナで他の活動もほぼ中止になりました。
国防というミッションに従事し、そのミッションに向かう真摯な姿を目の前でリーダーに見せられたら、全員がそうなるとは言いませんが、ついていこうって気持ちになるのが普通です。多くの隊員仲間も同じミッションのもと、同じように感じている人が多く、そのような環境にいればお互いに良いエネルギーを生み出し、良い影響を受けます。
これからも学びは続きます。
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イラスト提供 Instagram @singapolah