サーキットブレイカー解除後、6月7日から2週間に渡って6名の政府首脳陣から国民に向けたメッセージが次々と伝えられていますが、最初にリー首相が話をされてから、既に5名の大臣が話をされました。
昨日、5番手で話をされた Tharman 上級相のお話しはとても鋭く、刺さる内容でした。コロナ禍からの再生の現実は厳しいという状況を明確に伝えつつも、政府が主導するので、国民の皆さんも共に頑張ってほしい、信じて着いてきてほしいといったメッセージ。
またコロナ禍に関連しつつ、かなり大きな流れで次世代、次々世代に渡って、シンガポールの未来像が見えるような内容とも捉えられ、コロナを機会にシンガポールは大きく舵を切り、今まで以上に違った形で進化をしていく、そんな事も感じるものでした。
■ スピーチのテキスト全文はこちら
VIDEO
ポイントとなる部分だけをピックアップしましたが、書いていない部分にも重要なメッセージがたくさんありました。必要な方は、少し時間をとってでもオリジナルの英文/動画をご覧いただきたい内容です。長めなので英文の記載は省きました。
コロナによる影響で、世界中の所得減少は、過去100年で最も深刻であると予想されています。これは単なる景気後退ではなく、次々と深刻な社会的危機を引き起こしています。
シンガポールは世界的な景気後退の波に逆らうことはできません。 しかし、他の多くの国で起きているような社会的結束の喪失、二極化、絶望、これらに打ち勝っていく必要があります。
Strengthening our Social Compact ~ 社会的結束の強化について
国民 1人1人 全ての人が、最大限の可能性を達成するために、努力をする必要があります。そして、避けようのない挫折から立ち上がり、誰も取り残されないよう、全ての人は社会として共同的責任を負う必要もあります。
Tackling Unemployment ~ 失業対策について
現在の最優先事項は、仕事を失った国民の救済です。これは単なる経済問題ではなく、社会的優先事項です。政府は国民が長い間失業するのを防ぐためにできる限りのことをします。そうすることで、国民の皆さんが自分の足で立ち、個人の尊厳を保つことができます。良い仕事に就くことは、結束力のある社会を構築し、不平等を和らげ、全体的な好循環に繋がります。
これまでに2度、6%を越えた高い失業率に直面したことがあります。1度目は 1960年代後半、イギリスが軍隊を撤退した時、2度目は 1980年代半ばの大不況に見舞われた時です。当時の状況とは全く違い、現在のシンガポール経済は、はるかに多様化しており、競争力を備えていますが、現実的な問題は、強い逆風に直面していることです。
The Future of Jobs Begins Now ~ 未来の仕事は今始まる
デジタル化、技術の進歩によって多くの職業が変化しています。これについては政府としても数年前から対応していますが、コロナによって急速に早送りされています。
国民の皆さんは、誰もが今後、再生の軌道に乗れるようにギアを入れ替える勇気を持ち、そのために、今までのキャリアの中で新しいスキルを習得しアップグレードすること、もしくは今までとは全く違う分野でのスキルを習得する努力が必要になるかもしれません。どうか勇気を持って臨んでください。
Keeping Social Mobility Alive ~ 社会的流動性を維持する
経済的に貧しい家庭、恵まれない家庭への支援を行い、全ての子どもたちが就学前の幼児教育期から平等に教育を受けられるような制度をこれまでにも作ってきましたし、今後もそれを実現するために政府として絶え間ない介入を行い、質の高い教育を提供します。
早い時期から全ての子どもたちに高い教育を提供することで、社会に出た時に仕事や就業機会、選択の幅が広がり、生涯に及んでアップグレードする環境をつくる、国民の総底上げという壮大なプロジェクトととれます。
社会的流動性は、今年2020年から世界で調査が始まった指標で、職業、収入、教育などにより社会的地位、機会が平等に提供されているかを表し、貧富の差や社会的平等を測る目安となるもの。
主な調査結果
1位 デンマーク
2位 ノルウェー
3位 フィンランド
15位 日本
20位 シンガポール
27位 アメリカ
45位 中国
※青い文字はスピーチの内容ではありません
Building a Stronger Culture of Solidarity ~ 強力に結束する文化を創り上げる
国民が一致団結して結束する文化を強化し、日常生活の中で困難に遭遇したとき、国民同士が互いに支援する必要があります。特に低中所得層へのサポートを一層強化します。クリーナー、セキュリティ、庭師は、過去5年間で賃金が実質30%増となりましたが、これで終わりではなく引き続き改善をはかり、低中所得者層にも公平な社会を構築するために取り組みます。
Our Confidence in the Future ~ シンガポール人としての未来への自信
最終的に、これからの未来に対する国民の自信は、全ての人によって生み出されるものであり、それは国による政策よりも、はるかに深いものです。
世界のどの国にとっても厳しい時ですが、シンガポールの場合、海外からの投資があること、世界からたくさんの人がシンガポールに来て、観光としてもビジネスとしても、世界的なハブ空港、貿易港として人が往来すること、世界と広く繋がって外需があること、世界がダイナミックに動くことによって、その恩恵を最大に受けられるのであり、どの国の扉も閉ざされ、それが不可能な今、シンガポールがどんなに深い窮地にあるのか、傷の深さを改めて感じています。
フェーズ2への移行が発表されたばかりで、ここから一気に経済的回復へギアアップしていきたい気持ちは誰も同じではありますが、回復には時間もかかり、コロナによる影響、打撃は実感している以上、思っている以上に深いかもしれません。倒産、失業の影響が更に深まるのもこれからと見られています。
首相を始め、全ての大臣が団結、結束 の必要性について、口が酸っぱくなるほど繰り返し繰り返し強調しています。シンガポールは自然資源もなく、国土が小さいため、最大の資源は人 です。コロナ禍、SGUnited を合言葉にここまで来れたのも、シンガポール人が自分たち自身が資源となると強く認識し、脆弱な国であることを認識しているからです。
A forward-looking, spirited and more cohesive society. でスピーチが締めくくられているように、シンガポール人は未来思考が強く、世の中の変化にいち早く対応していくことが国の発展に繋がっています。回復の道のりは、あちこちに痛みを伴うものになるでしょう。時間もかかると思いますが、私自身もシンガポール社会の一員としてその一歩一歩を見守っていきたいと思います。
そして、このコロナ禍をシンガポールで過ごした経験は、シンガポール国民はもちろんのこと、外国人にも、多くの人にとっても広く日常生活の中で前進する力となっていくことでしょう。
最後に、Tharman 上級相へのシンガポール人の信頼、支持は厚く、リー首相引退の話しが上がってから次期首相には Tharman 上級相をという声が長らく上がっていましたが、次期首相がほぼ決まった状況になって以来、その声は消えていました。今回の Tharman 上級相によるスピーチで、一部の国民からによるものではありますが改めて Tharman 上級相の人望を感じる機会となりました。
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イラスト提供 Instagram @singapolah
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