フェーズ3 への移行会見がなぜ余裕の空気感に包まれていたのか。フェーズ3 発表後に続々と出てくる新たな取り組みを見て分かってきました。
シンガポール政府が見ているのは、もはやコロナ対策ではないこと。目先のコロナ/ with コロナに引き続き対応するのはもちろん。でもシンガポール政府が見ているのはもっと先。これまで通り、シンガポールの存在感を世界に向けてどうやって打ち出すか、小国の付加価値を世界に向けてどうやってアピールしていくか、焦点はもうそこに移っているのだと感じます。
ドミトリーでの爆発的感染、サーキットブレイカーが終わるまでは、目の前の火消しに手一杯でそこまでの余裕は感じられませんでしたが、フェーズ 1~3 として段階的緩和を実施する発表があった時、フェーズ 3はワクチンが開発されるまでどれぐらいの期間になるかは未定という内容でした。それを考えると、見込んでいたよりも大幅な前倒しでワクチンを入手できることになり、今回のワクチン入手と来年までの供給計画がある程度明確になったのは大きな前進だったことが伺えます。
フェーズ3への移行と続いて発表されたのが、2021年1月後半から開始予定、ビジネス用途向け隔離トラベルレーン の運用。ビジネス目的でシンガポールを訪れる短期滞在者は、隔離の必要がなくなる代わりに、シンガポール外から来た違う国のビジネス旅行者どうしが商談したり、会って話す必要がある重要度の高いミィーティング、書類での締結作業などを行える Connect @ Changi という専用施設をチャンギ空港近くにオープンしました。
その施設についてニュースよりも分かりやすいのが、運輸大臣、産業貿易大臣がソーシャルメディアで発信している内容。
エキスポ (チャンギ地区にある展示場) のホールを改造してつくられた Connect@Changi
宿泊設備 1300部屋数以上
感染防止のパネルを完全装備したミィーティングルーム 300部屋以上
専用宿泊施設内で感染検査を実施します
こちらが Ong 運輸大臣 によるオリジナル動画。
先の施設画像はこの動画からのスクリーンショットです。
動画の中で Ong運輸大臣は、この施設オープンはコロナからの回復をもたらす国家的プロジェクトで、仕事が激減した航空業、航空関連業への回復の足掛かりとなるものと話しています。試験的にやってみる意味合いが大きいでしょう。需要があってうまくいけば増やせばいいこと。なければやめればいいのです。と言っても言葉で言うのは簡単で、それを実行するのは難しい。それでも考えるよりもやってみる、アイデアを形にする、シンガポールの最も得意とするところです。
今月初めのニュース。来年 2021年5月の世界経済フォーラム会議をシンガポールで開催することが決まりました。世界経済フォーラム (WEF) は毎年スイスで行われ、1971年に WEFが始まって以来、スイス国外で開催されるのはこれで2回目、アジアで開催されるのは初めてとのこと。ヨーロッパでのコロナ感染が止まらないこと、シンガポールの感染状況が落ち着いていること、対策が優れていることが評価されました。
この会議のために世界から政治家、ビジネスマンなど世界の要人が集まり、この会議を安全に終わらせることはシンガポールの一大ミッションになります。2018年米朝首脳会談でシンガポールが開催国としての役目を果たしたことは大きなニュースになりましたが、それに匹敵する世界的な大規模会議をコロナ禍で行う重大ミッション。感染拡大は絶対に起こせません。来年 5月まではコロナ対策に関しては緩和を進めつつ、引き締め傾向が続くとも考えられます。
MICE 事業はシンガポール観光局が中心となってシンガポールが国として積極的に取り組んでいる事業のひとつ。世界的な国際会議、展示会、見本市、イベントを誘致し、それにふさわしい施設、施設内のオンラインやメディア設備、宿泊施設、会議と観光を効率よく行えるような交通網を整えるなど、多方面に渡って常に準備しています。WEF が安全に行われればシンガポールを世界的に安全な場所だとアピールする絶好の機会です。
*
ワクチンの見通しが立って大きく一歩前進したとは言っても、どの国も先が見えなく不安なのは同じ。新しいアイデアを採用したり、シンガポールから成功例をどんどん作って世界に波及させ、世界の国々が互いに刺激され、励まされて世界全体が活気づくといいなと思います。
バナーをクリックで応援お願いします!
にほんブログ村
イラスト提供 Instagram @singapolah